身近な税金のこと
第4回 残り3年半という期限付の税対策とは
~住宅取得資金贈与制度~
※掲載している内容は、
2015年12月1日時点のものです。
みなさまこんにちは。
小欄を担当させて頂きます、新宿総合会計事務所の税理士伏木栄太郎(ふせぎえいたろう)です。税に関するお役立ち情報の第4回目をお届します。
現在の贈与税の特例は、高齢者層から若年層への資産移転を推し進めており、今回ご紹介する住宅関連の特例もその役割を担っています。

■住宅取得資金贈与制度の要件
この制度は適用が平成31年6月30日までの期限付きです。
住宅取得のために、下記に述べる一定の者が直系尊属から住宅取得資金の贈与を受け、翌年3月15日までに新築・取得・増改築をし、その家屋に居住した場合に、その贈与を受けた住宅取得資金の一定金額まで、贈与税が非課税となるものです。
もともと時限立法ではありましたが、住宅業界を下支えする意味合いもあり、今年で2度目の延長となりました。
住宅取得資金を受ける者の要件として、贈与を受ける年の1月1日で20歳以上・国内に住所を有する・所得税の計算において収入から支出を差し引いた合計所得金額が2,000万円以下、などがあります。なお『直系尊属』からの贈与が適用になりますので、配偶者側の両親や祖父母からの贈与は対象になりません。
その資金を基に取得する家屋は国内にあり、床面積が50㎡以上240㎡以下である必要があります。またこの贈与を受けた者の配偶者や直系血族、親族等から家屋を取得等する場合にはこの非課税制度は適用できません。


■非課税額
非課税限度額は、住宅用家屋の取得に係る「消費税率」と「契約の締結期間」によって変動します。平成27年中の非課税限度額は、良質な住宅用家屋※の場合は1,500万円、それ以外の住宅用家屋の場合は1,000万円(最大では平成28年10月から平成29年9月に取得に係る契約をし、消費税10%で家屋を取得した場合の3,000万円です)。
※ 省エネルギー対策や耐震・免震に係る等級が一定以上の家屋をいいます。
■相続税との関係
この制度は相続税対策の観点から非常に優れていると言えます。ポイントは2つ。
まず贈与の方法としては「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの方法がありますが、贈与を受ける者がどちらかを選択していても、この住宅取得資金の非課税制度を重複適用できますので、積極的な贈与が検討できます。
また亡くなる前3年以内に実行された相続人に対する贈与については、相続税の計算をする際、通常はその贈与がなかったものとして、相続財産に加算されて相続税が計算されてしまいます。しかしこの制度を適用した後3年以内にその贈与をした方が亡くなった場合でも、相続税の計算に含める必要はありません。
通常の贈与はもらった方の使途までを指定することはできませんが、この制度は贈与されたお金が必ず住宅の取得に充てられますので、贈与をする方の意思をしっかりと反映させることのできる制度と言えます。
相続税対策をお考えの際には、まずはこの優遇税制をご検討なさってはいかがでしょうか。


コラム執筆者
新宿総合会計事務所 税理士
伏木 栄太郎 さん
- ※掲載している内容は、2015年12月1日時点のものです。
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