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身近な税金のこと

第7回 感謝され節税につながる「贈与の優遇税制」とは

※掲載している内容は、
2019年8月1日時点のものです。


新宿総合会計事務所の伏木栄太郎です。2016年5月に紹介した「教育や結婚・子育てに関する子や孫への一括贈与」については、実際に活用されている実態があります。それを受けて、この贈与の優遇税制が何故、活用されているのか、税制の内容だけではなく、活用されている方が実感されたメリットや活用に当たっての留意すべき点を、また、2019年税制改正の内容(一部適用要件が厳格化)についても追記する形でご紹介したいと思います。

■「贈与の優遇税制」の活用状況

この税制によって、教育資金に関する贈与が着実に増えていることは、次のグラフ(一般社団法人信託協会より引用)から読み取れます。

制度発足時の2013年1月から9月までの申込件数は約4万件と好調な出だしで、グラフの通り2019年3月時点の累計申込件数は約22万件と大幅に伸びています。また1件あたりの平均贈与額は約700万円となっています。


「教育資金贈与信託」受託状況


教育資金贈与信託受託状況

資料出所:一般社団法人信託協会調べ(2019年7月)

■「贈与税の優遇税制」のポイント

一般的に「贈与」というと毎年一定額を贈与することを想定しますが、この贈与税制のポイントは、「未来に必要な資金等を、まとめて一括贈与しても“非課税”となる」ことです。

「教育資金」と「結婚・子育て資金」の贈与税制に分けて見ていきます。
 (以下、※印部分が2019年税制改正の内容)

1.教育資金の子・孫への贈与税制

教育資金に関する贈与の優遇税制は2013年の税制改正で創設され、以下の通りです。


◇教育資金の贈与税制の概要

  • ・30歳未満の子や孫1人につき、1,500万円まで贈与税が非課税となる

    (※うち、学校以外の習い事も認められるのは、限度500万円であるが、2019年7月1日以後に支払われる教育資金から、23歳以上の贈与を受ける方にかかわる趣味習い事等の費用は除外されることとなった)

  • ・贈与する金銭を金融機関等に信託する方法で行う
  • ・教育資金(入学金、授業料、入園料、受験料、定期代、修学旅行費、給食費などの支払い)に充てた領収書を金融機関に提出する
  • ・贈与として信託する期間(金融機関等での手続き完了日)は2021年3月31日までと期限がある

    (※2019年4月1日以後の贈与については、贈与を受ける方の贈与年の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、この優遇税制を受けることができなくなった)


この贈与税の優遇税制は開始から6年目に入りました。実際に活用された方が認識されたメリットと留意点は以下の通りです。


◇教育資金贈与のメリット

  • ・一括で贈与するため、確実に相続税の節税につながる
  • ・資金使途が「教育資金」と明確になっているため、贈与する方の意図が明確となり、感謝されている現状がある
  • ・贈与した方や贈与された子や孫が死亡した場合でも再び相続財産に計上されない

    (※上記の適用要件は贈与を受ける方が以下に該当する場合に限られることとなった

    • ・23歳未満である
    • ・学校等に在学している
    • ・一定の教育訓練を受けている)

◇教育資金贈与の留意点

  • ・子や孫が、30歳の時点で残額がある場合には、贈与税が課税される

    (※贈与を受ける方が学校等に在学している場合、一定の教育訓練を受けている場合には、一定の期間まで非課税期間が延長されることとなった)

  • ・教育資金の領収書はしっかりと信託銀行へ提出しなければならない

(注)教育資金以外での支出をした場合には、通常の贈与税が課税される

2.結婚・子育て資金の贈与税制

この制度は、「教育資金」の一括贈与の好調を受け、「結婚・子育て」等を後押しするため、2015年の税制改正で創設されました。

非課税となる使い道は、「結婚」「出産」「子育て」に限定されます。教育資金の一括贈与との違いは、贈与した方が死亡された際、残額に相続税が課される点です。その影響か、同制度の活用件数は、同信託協会によると2018年3月末で5,343件となっており、1件あたりの贈与金額も280万円と、教育資金の場合(約700万円)と比較して少なくなっています。


◇結婚資金等の贈与税制の概要

  • ・20歳以上50歳未満の子や孫1人につき、1,000万円まで贈与税が非課税となる
    (うち、結婚については300万円が限度)
  • ・贈与する金銭を金融機関等に信託する方法で行う
  • ・結婚・子育て等(結婚式、披露宴、引越費用、新居の家賃、出産や不妊治療費用、子の医療費や保育料、ベビーシッター代など)の支払いに充てた領収書を金融機関に提出する
  • ・贈与として信託する期間(金融機関等での手続き完了日)は2021年3月31日までと期限がある

    (※2019年4月1日以後の贈与については、贈与を受ける方の贈与年の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、この優遇税制を受けることができなくなった)


実際に活用されている方が認識されたメリットと留意点は以下の通りです。教育資金の場合と同様な内容でもありますが、再掲いたします。


◇結婚等資金贈与のメリット

  • ・相続税の節税につながる
  • ・資金使途が明確かつ慶事(結婚等)であるため、贈与する方の意図が明確となり、感謝されている現状がある

◇結婚等資金贈与の留意点

  • ・贈与した方が、死亡された時点で残額がある場合には、贈与された子や孫に相続税が課税される

    (※ただし、相続税額の二割加算規程には該当しないと明記されることとなった)

  • ・子や孫が、50歳の時点で残額がある場合には、贈与税が課税される
  • ・結婚資金の領収書はしっかりと信託銀行へ提出しなければならない

(注)結婚資金以外での支出をした場合には、通常の贈与税が課税される


今回ご紹介した2つの贈与は、相続税対策において重要なポイントとなります。本制度の使い方も大きな鍵を握ると考えられますので、贈与等をご検討の際には専門家へご相談ください。

税理士法人 新宿総合会計事務所 税理士 伏木 栄太郎 さん

コラム執筆者

新宿総合会計事務所 税理士

伏木 栄太郎 さん

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  • ※掲載している内容は、2019年8月1日時点のものです。
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