身近な税金のこと
第9回 相続対策に有効な生命保険活用術
※掲載している内容は、
2016年8月1日時点のものです。
生命保険契約は相続税を考えるうえで、節税対策・争族の防止・納税資金の捻出、とあらゆる場面で大きな役割を果たします。相続財産が多い方はもちろんのこと、それほどではなくてもその効果が見込めるため、各種対策を考えるうえで外せない手段であると言えるでしょう。
(1)節税対策
生命保険は契約形態によって様々な課税のパターンが存在します。
■契約形態における課税パターン ※同アルファベットは同人物を示します
契約形態 | 契約者 | 被保険者 | 受取人 | 課税関係 |
---|---|---|---|---|
契約者=被保険者 | A | A | B | 相続税 |
契約者=受取人 | A | B | A | 所得税 |
全て別人 | A | B | C | 贈与税 |
①相続税の非課税金額
生命保険金を受取る際に、相続税の非課税枠があることは広く知られています。相続人が受け取った死亡保険金のうち、「500万円×法定相続人の数」の金額までは非課税となるために相続税がかかりません。死亡時に有する現金に対してはそのまま相続税が課税されますが、生前にその現金で生命保険契約に加入し死亡時に保険金で受取れば、非課税枠までは無税で現金を受け取れるので節税面で非常に有利となります。
②保険料相当額の贈与
「契約者=受取人」の場合、自分が保険料を支払い自分自身で保険金を受け取るため、所得税が課税されます。所得税率を乗じる課税所得は一時所得である「保険金額-払い込み保険料-特別控除額(50万円)」の金額の1/2と計算されます。よって相続財産が多く相続税の税率が高くなる場合には、親から子へ暦年贈与の非課税金額を利用して保険料相当額を贈与することで相続財産を減少させるとともに、子自らが保険に加入をして一時所得の課税を受けた方が相続税の課税よりも有利なケースも多いでしょう。
(2)争族の防止
生命保険は生命保険金の受取人を指定することができます。そしてその受取保険金は受取人の固有財産として扱われるために、遺産分割協議を経ずに受取人が確実に受取ることができます。例えば、相続財産が自宅のみで複数の相続人で分けようがない場合等には、争族へ発展してしまう可能性があります。しかし自宅を取得した相続人が保険金を受け取っていれば、その保険金を他の相続人へ金銭で渡すことで争族を防ぐこともできるでしょう。
(3)納税資金の捻出
生命保険は死亡時に直ちに現金を手にすることができるため、納税資金の準備が機動的に行えます。
(4)注意点
生命保険契約の活用については、契約形態によっては逆効果となったり、全く意味を成さずに保険料を支払うだけとなってしまうこともありますので、加入の際には必ず専門家へ確認してください。
また、通常は契約者がその保険に係る保険料を負担することになりますが、契約者が子・保険料負担者が親、という状態も見受けられます(上記(1)②の贈与がなされていない場合を指します)。この場合、この保険契約は、保険料を負担者した親に帰属するものとされます。よってその生命保険契約に係る契約者としての地位が親の相続財産に該当しますので、親死亡時にしっかり財産へ計上することが大切です。

コラム執筆者
新宿総合会計事務所 税理士
伏木 栄太郎 さん
- ※掲載している内容は、2016年8月1日時点のものです。
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