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第12回 相続税における養子縁組でのメリット・デメリット
~最高裁が示した初判断とは~

※掲載している内容は、
2017年2月1日時点のものです。


平成29年1月31日、「相続税対策で結んだ養子縁組は有効かどうか」が争われた訴訟で、最高裁は「節税目的の養子縁組でも直ちに無効とはいえない」との初判断を示しました。相続税の基礎控除額が平成27年より縮小されたため、税制改正前よりも積極的に節税策を模索する動きが出ています。

例えば、「何か手っ取り早く節税できないか」と「養子」制度を検討される方がいらっしゃいますが、この判決はこうした相続税対策の一環として広がる養子縁組制度の活用を追認したかたちとなりました。

しかし焦りは禁物です!まずは、養子縁組のメリット、デメリットの両面をしっかり確認することが重要ですので、今回はそのポイントをご紹介いたします。

■養子縁組にはどんな節税効果があるのか?

相続税を計算する上で、養子縁組がどのような節税効果を生むのかをみてみましょう。以下の4つが具体的な節税効果と考えられます。

(1)相続税の基礎控除額の増加

これは一般に良く認識されている効果です。税制改正後の基礎控除の計算式は【3,000万円+600万円×法定相続人の数】ですが、養子縁組により、この法定相続人の数のカウント分(600万円)が養子の数だけ増えます。

(2)「相続税算出のための速算表における控除額」の増加

相続税額を算出する際には、各法定相続人の取得金額に相続税率を乗じた後、一定の【控除額】を差し引きます。この控除額分が養子の数だけ増えます。

養子が1人増えた場合、例えば、相続税率が15%ラインであれば相続税額が50万円、相続税率が30%ラインだと相続税額が700万円も減少することになります。


(相続税の速算表から一部抜粋)

法定相続分に応ずる
各人の取得金額
税率 控除額
1,000万円超
~3,000万円以下
15% 50万円
3,000万円超
~5,000万円以下
20% 200万円
5,000万円超
~1億円以下
30% 700万円

(注)1,000万円以下と1億円超の欄は省略している。

(3)税率構造における低税率区分への移行

相続税の税率は、財産が多ければ多いほど、税率も高くなっていく累進税率が採用されています。遺産全体を相続人の数で割って、上記の速算表の税率区分に当てはめますので、養子縁組をすることにより、30%ラインが20%ラインに、20%ラインが15%ラインに、となることもあり得ますので、節税となります。

(4)未成年者控除や障害者控除

養子となった方が未成年者や障害者であり、税額控除の要件を満たす場合には、定められた税額控除も受けることができますので、節税となります。

■デメリットに注意

ただし、養子縁組には、注意すべき点もあります。法定相続人の数としてカウントできる養子の数は、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人と制限がありますので、無限に基礎控除等を増加させる、といったことはできません。

また、最も重要なことは、“争続”を起こさない為の配慮です。例えば3人兄弟がいて、突然、そのひとりの配偶者や子どもが養子になると、その養子は他の兄弟と全く同じ法定相続分を有することになりますから、家族間のわだかまりが生じやすくなることは容易に想像できます。


単に相続税が安くなるから、という理由だけで養子縁組を行うと、お金には代えることができない大切なものを失ってしまうかも知れませんので、十分な注意が必要です。

さらに踏み込んで考えますと、争続の状態で相続税の申告期限を迎えてしまい、その時点で相続財産が未分割だった場合、小規模宅地等の減額制度や、相続税の配偶者の税額軽減制度といった各種の優遇税制は、適用できませんので、余計な税金を一時的にも国へ支払う必要が生じます。

「養子なんてしなきゃよかった」という事態を招いてしまっては本末転倒です。養子縁組は手軽にできて、目先の節税効果も見えやすいですが、いちど全体を見渡して本来やるべきことは何か、その対策を実行するとどうなるのか、などの点を慎重に検討しておく必要があります。


今回は養子縁組のメリット、デメリットの両面をご紹介しましたが、状況はそれぞれのご家族で異なります。養子縁組を行うかどうかはこの両面を踏まえた上で、家族内できちんと話し合い、理解をした上で判断することが大切です。

税理士法人 新宿総合会計事務所 税理士 伏木 栄太郎 さん

コラム執筆者

新宿総合会計事務所 税理士

伏木 栄太郎 さん

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  • ※掲載している内容は、2017年2月1日時点のものです。
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