インタビュー

※掲載している内容は、2016年6月1日時点のものです。

相続対策の選択肢をひろげる“家族信託”

今回は「家族信託」についてお話ししましょう。
 “信託”と聞いても、日々の暮らしにおいては馴染みが薄いことと思います。 それは税務の世界でも同じで、かつては信託の仕組みを相続や贈与のシーンに用いることはありませんでした。それが、平成19年の法改正で信託制度の使い勝手が良くなったため、身近なものになり、信託を使って相続対策や老後の準備を行おうとお考えになる方が増えていらっしゃいます。

■家族信託で認知症に備える

 家族信託の仕組みは、信託銀行において取扱いがある信託と基本的に一緒で、所有する財産を誰かに預け、それを代わりに運用してもらうことになります。信託銀行が営業をするのには免許が必要ですが、家族信託は、預ける・預かる役割を親族内だけで完結させる仕組みのため、免許は不要です。様々な場面で家族信託の利用が想定できますが、最も有効に機能するケースとしては「認知症に備える」ことではないでしょうか。

 例えば、収益物件を所有する方が認知症を患った場合、その物件に係る管理会社とのやりとりや業務委託契約の変更、修繕の依頼、物件の売却、新たな物件の取得、といった法律行為がご本人では行えなくなります。従来は後見制度を用いての対応が主でしたが、いわゆる成年後見人制度を使うとなると、原則として財産を『守る』ための手続きしか出来ません。これは現行の後見人制度は、財産の保全と管理を目的としているからで、後見人を付けると積極的な資産運用は出来ませんし、裁判所に財産の報告をする必要がある等、非常に窮屈になってしまいます。 この後見制度に代わるのが、家族信託です。

 アパートを所有する父親が、子にその管理を任せる例で見てみましょう。父親が委託者となって、受託者となる子へアパートを預け、毎月の家賃収入は父親が今まで通り受け続けるという信託契約を結ぶとします。 信託法上、このアパートの名義は受託者である子へ移ったとされますので、父親に判断能力が無くなってしまっても、子の意思で各種の法律行為を父親に代わって行うことが可能となります。

家族信託における信託契約の内容は、当事者間で細かく規定することが出来ます。
例えば、

  • ・どの財産を信託契約に盛り込むか
  • ・受託者の権限をどこまでとするか
  • ・受託者を複数とするか
  • ・信託の終了事由をどうするか
  • ・信託終了後の財産のゆくえをどう指定するか、等

 このように自由に信託契約の内容が決められる点が普及の一因でしょう。また、信託された財産の信託終了後の行先も指定できますので、遺言書と全く同じ効果を持たせることも可能です。さらに遺言書は一代限りしか指定できませんが、家族信託であれば、子の相続時や孫の相続時にまで信託財産の行先を指定することが可能なことも特徴のひとつでしょう。

■家族信託の課税関係

 父親が委託者、子が受託者、父親が受益者である先ほどのケースでは、家族信託を結んだ時点では何ら課税関係は生じません。税法上は受益者が所有者と解されますので、家族信託を組んでも所有者の異動が無い本ケースでは税金はかかりません。
 一方、父親死亡時においては、信託されたアパートの所有者は父親ですので、相続税が課税されます。そのアパートの相続税評価額は、家族信託をした場合でも、しなかった場合でも同額となります。

 家族信託を締結すること自体は全く節税となりません。しかしながら、何も手立てをしなければ塩漬けとなってしまう財産でも、信託契約があるために資産の組換えなどの節税策が採れることがあります。 相続対策の選択肢を広げる意味でも、家族信託は大きな可能性を秘めています。ご検討の際には専門家へご相談ください。

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※掲載している内容は、2016年6月1日時点のものです。

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