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~猫の下痢の原因~下痢のタイプごとに病院に連れて行く判断ポイントを解説

愛猫が下痢をすると心配になりますよね。下痢をしていてもそれ以外はふだん通り元気なこともあれば、嘔吐・食欲不振など下痢以外の症状が同時に出ている場合もあるでしょう。
猫の下痢の原因は、寒さやストレス、食事、寄生虫、ウイルス、疾患など多岐にわたります。
本記事では、猫の下痢の原因や、病院に連れて行く際の判断ポイントなどについて解説します。下痢の色や形状、臭いについても触れますので、参考にしてください。
猫の下痢の原因
猫の下痢の原因はストレスなどの一過性のものから、疾患が原因となるものまでさまざまです。下痢をしていても元気な場合などは、すぐに動物病院に連れて行くかどうか迷うこともあるでしょう。
猫の下痢の主な原因として、次のものが考えられます。
それぞれについて詳しく解説します。
寒さ
人間と同様、寒さなどでお腹が冷えると、軟便や下痢になりやすい猫もいるため、注意が必要です。
季節の変わり目など、急な気温差がある時期は気を配りましょう。寒さなどで体温が下がりお腹が冷えると、腸内で水分の吸収ができずに細菌のバランスが崩れたり、消化酵素の働きが弱まったりして消化不良を起こします。
薬
抗生物質など、処方された薬が合わないために副作用で下痢になることもあります。
疾患の治療などで投薬を始めたあとに下痢が始まった場合は、動物病院に相談してみましょう。
ストレス
猫はストレスに弱い生き物で、ストレスで下痢になることもあります。
ストレスの要因として、次のものが挙げられます。
これらの要因が猫にストレスを与える可能性があるため、飼い主は猫が快適な環境で過ごせるように配慮する必要があります。
ストレスが要因の場合、環境に慣れると下痢がおさまることもあります。環境が変化したあと、長い間下痢がおさまらない場合は動物病院に連れて行くとよいでしょう。
食事(フード)
下痢の原因は食事(フード)の可能性が考えられます。
食べすぎや急な食事の変化により消化・吸収不良が起き、下痢となることがあります。
下痢が長期間続く場合、食物アレルギーが原因の可能性があり、その場合は獣医師と相談しながらアレルゲンをつきとめるなどの対処が必要です。
寄生虫やウイルス
猫の下痢は、寄生虫やウイルスの感染によって起こる場合もあります。寄生虫に感染しているかどうかは、虫卵の有無を顕微鏡で観察して判断します。ウイルスに感染しているかどうかは抗体検査などを行って確認します。
また、猫パルボウイルス、猫腸コロナウイルスなどのウイルスに感染すると、下痢になることがあります。ウイルスは他の猫から感染することが多く、感染予防にはワクチン接種や完全室内飼育などが有効です。
疾患
下痢となる疾患の例として下記があります。
消化器系の疾患は、食道、胃や腸、肛門までの器官の疾患を指します。猫の場合、特に胃腸が疾患になりやすく、下痢を伴う胃腸の疾患は、急性胃腸炎や胃潰瘍、大腸炎などが挙げられます。
また、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝や肝臓が炎症を起こす肝炎、肝不全なども下痢の一因です。膵臓が炎症を起こす急性膵炎などでも、激しい下痢や嘔吐の症状が見られます。
一般的に疾患が原因の場合、下痢はなかなか治りません。数日間下痢が止まらない、嘔吐を伴う、元気がない、体重減少が見られるなどの場合は、疾患の可能性も考慮して早めに獣医師の診察を受けましょう。
猫が下痢をした際の動物病院へ連れて行く判断ポイント|タイプ別

一般的に、健康的な猫の便には下記のような特徴があります。
上記よりも回数が多い、便に水分量が多く形を保てていない、色がふだんとは違う、粘液が混じるといった場合は注意が必要です。
下痢で獣医師にかかる場合、実物を見せると状況がよく伝わります。難しい場合は、毎回写真に撮っておくと回数や状況が伝えやすくなるのでおすすめです。
下痢の色
下痢の色によってある程度、猫の健康状態に見当をつけることが可能です。ここでは、次の5つの場合の、考えられる症状について解説します。
なお、便の色は体調だけでなく、フードや薬など、体に取り込んだものが影響することもあります。便の色にかかわらず、下痢が数日間続くようであれば、猫が元気であっても動物病院を受診しましょう。
黄土色
黄土色の便は基本的に正常です。いつもと同じ黄土色の便が下痢の状態で出てきて、元気で嘔吐などを伴わない場合は1日程度、家で様子を見てもいいでしょう。
ただし、いつもと比較して黄色味が強い・黄土色の色味が薄いといった場合は注意が必要です。ジアルジアやトリコモナスといった原虫に感染している可能性があります。
ジアルジアやトリコモナスといった原虫に感染している場合、下記で紹介する「白・灰色」の便と同様、肝臓や膵臓などに異常があることも考えられるため、獣医師に診てもらうとよいでしょう。
また、ふだんと同じような黄土色の便で元気がある様子でも、下痢が何日も続くようであれば、動物病院を受診しましょう。なお、離乳前の子猫の便が黄色いのは正常な場合が多いです。
緑色
生まれたての子猫の便は正常な状態でも緑色の場合が多いですが、成猫では下記のようなケースで緑色の下痢が出ることがあります。
消化時間が短く、胆汁がうまく作用しなかった場合、下痢が緑色になることがあります。この場合は、寄生虫や感染症の可能性が考えられます。また、腸の壁に張り付いている細菌である「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」の変化により、便が緑色になることもあります。
緑色の下痢が数日続く場合のほか、元気がない、嘔吐を伴うといった場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
白・灰色
猫の下痢が白または灰色である場合は、膵臓または肝臓の異常が考えられます。
健康であれば、膵臓の膵液に含まれるリパーゼが脂肪を分解するため、白い便にはなりません。しかし、膵液の分泌が不足した場合、脂肪分が分解されずにそのまま便として出てきます。胆液に含まれるビリルビンがうまく代謝されない場合やカルシウムなどのサプリメントを多く摂ったときにも、白・または白っぽい、灰色のような便に見えることがあります。
白や灰色の便の場合は、胆のう障害や胆石症、急性肝炎、膵炎などを発症していて、膵臓や胆管などに問題のある可能性が高いと考えられます。そのため、元気かどうかにかかわらず早めに獣医師の診察を受けましょう。
赤色
猫の下痢が赤い、または血液が混ざっているような場合、大腸・肛門などからの出血が考えられます。ゼリー状の粘液などが付着していることもあるでしょう。粘液の付着については大腸性下痢症、潰瘍性腸炎、直腸がん、肛門のう破裂などが考えられます。
下痢とともに嘔吐症状がある、元気がない、便全体が血液でおおわれている、異物を食べた可能性があるといった場合は、速やかに動物病院に連れて行くことをおすすめします。
他に症状がない場合は、1~2日家で様子を見て、下痢が続くようであれば、獣医師に診てもらいましょう。
黒色
黒色の下痢はメレナとも呼ばれ、口や鼻、胃・小腸などから出血し、直腸にいたるまでの間に赤血球が分解されて黒くなっている可能性が考えられます。
タールのような黒色の下痢をしている場合、感染症や食道などの炎症、胃・小腸の消化器異常などが考えられます。また、異物を食べた場合も黒色の便が出ることがあるので、元気かどうかにかかわらず、早めに動物病院の受診を検討しましょう。
なお、鉄分の入ったサプリメントを与えている場合や、ネズミ、レバーなどの肉類を食べた場合も便の色が黒くなることがあります。
下痢の形状
猫の下痢の形状もさまざまあります。ふだんより少し水分が多めの便や半固形状のもの、泥状の便、ゼリー状の粘液が付着している便などです。
ここでは、軟便と粘液が付着した便について、詳しく解説します。
ほとんど水の便(水様便)・軟便(泥状便)
便の90%以上が水分と思われるような、ほとんど水の便(水様便)をしている場合は小腸性下痢症や大腸性下痢症が考えられるため、早めに動物病院を受診しましょう。
軟便は水様便よりは水分が少なく、通常便よりは水分が多いため、半固形状~泥状の便をしています。元気で食欲のある場合は、ストレスや食べ物など、一時的な症状の可能性が高いので、家でしばらく様子を見てもよいでしょう。症状が3日以上続くようであれば、動物病院を受診しましょう。
ゼリー状の粘液が付着している
ゼリー状の粘液が便に付着している場合、大腸炎の可能性が考えられます。猫はもともと大腸から粘液を分泌していますが、炎症により分泌が促進された状態だと考えられます。ふだんからお腹が弱く、ゼリー状の粘液が出やすい体質の猫もいるため、よく様子を観察しましょう。
元気で食欲があるようなら、しばらく家で様子を見てもよいかもしれません。嘔吐症状がある、元気がない、便に血液がついているといった場合は、早めに動物病院に連れて行くことをおすすめします。
元気であっても、3日以上粘液の付着した便が続くようであれば、念のため、動物病院を受診しましょう。
下痢の臭い
猫の便は臭いものです。しかし、下痢の臭いがいつもの便とは明らかに違う場合は早めに獣医師に診てもらいましょう。
いつもより臭いが強い原因の多くは硫化水素の増加によるもので、慢性腸炎や膵炎、感染症などによって起こります。
また、腐敗臭やすっぱい臭いがする場合は、腸炎の可能性が考えられます。また、薬品のような臭いや血液の臭いがする場合も、なんらかの疾患や中毒性のあるものを誤食した可能性が考えられるため、獣医師に早めに相談しましょう。
猫が下痢をしているときの食事のポイント

猫が下痢をしている場合の食事について解説します。
家で様子を見る場合は、いつものドライフードを水でふやかし消化しやすい状態にする、食事の量をやや減らすといった、腸を休ませてあげる対策にとどめておくことが大切です。
猫の食欲がない場合、無理に食事を与える必要はありません。一般的に下痢の際は体の水分が足りなくなるため、水を欲しているようであればしっかり与えましょう。
動物病院では症状に応じて、絶食・絶飲などの指示が出ることがあります。その場合は指示に従いましょう。
獣医師の診断がないまま、勝手に絶食や絶飲を行ってはいけません。下痢の場合は水分不足になりやすいため、水や食事を調整する場合は必ず獣医師の判断を仰ぎましょう。
なお、人と猫では体重も代謝も異なるため、人間用の下痢止めを猫にあげるのは絶対に控えましょう。
愛猫の下痢が心配な場合は、まず獣医師に診てもらおう
愛猫が下痢をすると、心配になります。猫の下痢の要因はストレス、食事、疾病など幅広いため、下痢をしたというだけではどのような病気かを見抜くことは困難です。下痢の回数や色などから慎重に判断します。
元気がない、嘔吐がある、下血がひどいといった下痢以外の症状がある場合は、疾患の可能性もあるため、早めに動物病院に連れて行きましょう。
- ※掲載している内容は、2024年7月18日時点のものです。
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