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いきいき生活の知恵

「いきいき生活の知恵」番外編
高齢者の3分の2が心配する「認知症」予防するには

今回のテーマは、高齢者が心配する事柄(※)の第1位である「身体能力の衰え」に次いで、高齢者の約3分の2の方が不安に感じている「認知症」についてです。前回に引き続きお話をうかがった岩井ますみさんは、認知症予防専門士としても活躍。認知症予防の極意をお聞きしました。
※NPO法人老いの工学研究所 調査より

認知症予防専門士になったきっかけ

――岩井さんが「認知症予防専門士」の資格を取得されたのは、どのようなきっかけからでしょうか?

岩井:私はカラーコーディネーターとして独立した当初から「高齢者のおしゃれ」を一つのテーマとし、介護を受ける方にもおしゃれを通じて笑顔や遊びを感じてもらいたいと高齢者施設や生涯学習を通じた活動をしてきました。そのため、認知症の知識や接し方の知識はありましたが、私自身のガン闘病中に重なった父の介護では、その知識を生かせず、やってはいけないことをやってしまう自分に嫌気がさしてしまいました。こうした経験から、父を看取ったあとに仕事に復帰することになったものの、以前のように介護が必要な人と向き合って活動していく自信がなくなってしまったのです。そうして悩みながらも、これまでの知識を活かせる方法はないかと考えたときに、「自分のような思いをする人を減らす活動をしよう」「認知症になる人を減らすために、“認知症予防”に力を注ごう」と決心し、「認知症予防専門士」の資格を取得したのです。

――ご自身の介護経験からだったのですね。

岩井:皆さんご存知のように、日本は世界でも屈指の長寿大国です。しかし、残念ながら、日本では平均寿命と健康寿命の差が大きいことが大きな課題とされています。大切なのは「元気で長生き」することで、平均寿命ではなく、「自立した生活を送れる健康寿命」が伸びていくのが理想的です。そのためには、高齢者だけでなく、私たち一人ひとりが健康寿命のための介護予防を意識していく必要があります。介護予防には寝たきり予防と認知症予防の2つのアプローチがあり、私はその認知症予防の部分を担おうと思ったわけです。

認知症予防で心掛けたい「筋トレ」と「脳トレ」

――認知症予防で心掛けるべきことは何でしょうか?

岩井:認知症の予防でおすすめしているのが「筋トレ」と「脳トレ」です。認知症というと1種類の病気のように思われますが、実は認知障害が起きるたくさんの病気の総称です。現在日本では、アルツハイマー型が約6割、脳血管障害型が約2割、レビー小体型とその他を合わせたものが約2割と言われています。糖尿病と高血圧は認知症のリスクを高めるという研究もありますので、これらを予防するためにも適切な食事と筋トレ(運動)の継続をおすすめしています。

――「筋トレ」を継続することが、認知症予防につながるのですね。

岩井:はい、そうです。しかし、この他にも、実は重要なことがあります。
認知症で最も多いとされているアルツハイマー型は、脳の中で「アミロイドβタンパク」と言う物質が、20〜30年かけて蓄積していき、認知障害を発症させると言われています。つまり、70歳でアルツハイマー型認知症を発症した場合、そのきっかけは40歳代から始まっていることもあり得るのです。見えない部分(脳)は日ごろなかなか意識できませんが、このアルツハイマー型では、初期の認知障害(MCI)が起きていても、適切な予防対策を講じれば進行を遅らせたりすることができると言われています。見えない部分(脳)は日ごろなかなか意識できないからこそ、大切なのが「脳トレ」です。

――具体的にどのようなことをしたらいいのでしょうか?

岩井:脳トレと言うと計算ドリルやパズルを解くことをイメージされるかもしれませんが、脳を活性化するためのアクティビティとして、身近で手軽な自分に合ったもの、楽しく持続できるものをおすすめしています。

私が考える脳トレのキーワードは、
・人を意識する (ドキドキ)
・会話を楽しむ (ニヤニヤ)
・新しいことにチャレンジする(ワクワク) の3つです。

そして、この3つを楽しく簡単に取り入れることができるのが「おしゃれ」なんです。特に女性の方であれば、毎日のおしゃれの工夫で脳トレができれば、これほど楽しく、続けやすいものはないと思います。

おしゃれで脳トレ

――「おしゃれで脳トレ」は気軽に取り入れられそうですね!実際に効果は見られるのでしょうか?

岩井:私がお会いした女性を例にお話しします。その方は軽度の認知障害と歩行の困難があり、すすめられたデイケアに行くのを嫌がっていました。ところが、見学に行くとデイケアではたくさんの方がおしゃべりをしたり、運動をしたり、楽しく過ごしています。それで、決心しいざデイケアに通ってみると、周りの人は身綺麗にして髪も整えている…自分は家にこもっていたために人目を気にしなくなり、髪はボサボサ、着るものはシミがつき古びていることに気付いたそうです。
そうなると、次に行くまでに、「着るものが欲しい、美容院にも行きたい」と、次々と気持ちの変化が現れました。人目を意識することで、脳が活性化したのです。[人を意識する(ドキドキ)]
こうして、まずは新調した服を着て、次は髪を綺麗にしてデイケアに行くと、周りの方から「きれいだね」「この間とは全然違うね」「なんだか若返ったね」と声がかかるようになり、心が弾み、デイケアに行くことが楽しみになっていました。[会話を楽しむ (ニヤニヤ)]
この「褒められる」ということは「がんばれ」よりも、ずっと効果的に脳に働きかける“言葉の魔法”だったのです。自分のことを褒められると脳の中では美味しい物を食べたり、報酬を得たりしたときと同じ箇所を刺激し、やる気を起こしてくれます。「もっと褒められるように工夫してみよう」という脳トレになるのはもちろん、「もうちょっと運動をがんばって自分の足で買い物に行ってみたい」、「おしゃれしてあそこに出かけてみたい」と筋トレにもつながっていきます。[新しいことにチャレンジする(ワクワク)]

――なるほど、脳トレが筋トレにも連鎖するんですね。

岩井:先ほどの3つのキーワードが良い連鎖を生みだしていることが、おわかりになるかと思います。
そして、ここからもう一つ素晴らしい効果が生まれるんです。
この方の場合、デイケアに行くという最初の一歩が人目を意識し、「おしゃれ」をするという新たなチャレンジにつながり、コミュニケーションが生まれて、褒められ、心がときめきました。心がときめくことは、「感情の老化防止」に大いに役立ちます。そして、「感情の老化防止」も認知症予防にとって大切なことの一つなのです。

――おしゃれ以外にも手軽にできる脳トレはありますか?

岩井:楽しく持続でき、ちょっとだけ難しいことに挑戦したくなる、ドキドキ、ニヤニヤ、ワクワクといった感情にも働きかける、お一人おひとりに合ったアクティビティがいいと思います。それは、料理や音楽、ゲーム性のあるスポーツかもしれません。一人ではなく、誰かとコミュニケーションが持てるもの、会話をしながらできるもの、自然に体を動かせるものがおすすめです。

――最後に、認知症予防に関心を持たれている方へメッセージをお願いします。

岩井:高齢者になってから慌てて何かを探すのではなく、ぜひ今から、自分の興味が湧くもの、ワクワクするもの、あなたに合った「脳を活性化させるもの」探しを始めてみてください。

岩井 ますみ さん

岩井 ますみ さん

「色と香りの生活提案イリデセンス」立上げ、主宰。カラーコーディネーター(AFT色彩検定1級)、日本認知症予防学会会員 認知症予防専門士。著書多数、講演活動をはじめ幅広く活躍中。

  • ※掲載している内容は、2018年5月1日時点のものです。
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