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いきいき生活の知恵

第13回 【高齢期のお金を考える会】いざというときに焦らない!高齢者施設選びの決め手は“優先順位”の策定

ファイナンシャル・プランナー(以下、FP)畠中雅子さんが主宰する「高齢期のお金を考える会」会員FPの方々によるリレーコラム第5回。

今回は、シニアライフを安心して暮らせる高齢者施設・住宅への住み替えコンサルティングに取り組み、セミナー講師や執筆活動もされている岡本典子さんに、「親の高齢者施設の選び方」について教えていただきます。

ファイナンシャル・プランナー(CFP) 岡本 典子 さん

教えていただいた方

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、終活アドバイザー

岡本 典子 さん

突然“高齢者施設選び”がやってきたら

親に介護が必要になったらどうしよう……と漠然とした不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。でも、あまり考えたくはないし、このまま元気であれば、ずっと自宅で暮らしていけるだろうと思っているかもしれません。しかし、徐々に介護が必要になっていくケースだけでなく、突然、高齢者施設への入居が必要となるケースもあります。たとえば、病気やケガで急性期病院に入院すると、ひと通りの治療が終われば退院となりますが、入院生活で筋力が衰えてしまい、元の生活に戻れない場合があります。自宅で介護できる方もいるかもしれませんが、状況によっては、お子さんである皆さんが親御さんに合った介護施設を早急に探さなければなりません。そのようなときに、いきなりどうやって介護施設を探したらよいか途方に暮れないように、基本的な知識を備えておくと安心です。

まずは高齢者施設の類型を正しく理解する

施設

高齢者施設と一口に言っても、いろいろなタイプに分かれています。公的施設と民間施設、介護付きと介護は別契約のところ、要介護度が高くなったり認知症が進んだりしても最期まで暮らせるところと住み替えが必要なところなど。選択を誤ると、再度の住み替えが必要になる場合も出てきます。

要介護度が進み、自宅での生活が困難になって施設を探す場合は、24時間365日、定額で介護を受けられる特別養護老人ホーム(特養)や介護付有料老人ホームが主な候補になります。特養の申し込みは原則要介護3以上で、待機者が多いエリアでは、すぐには入居できない場合もあります。その点、特養より費用が高くなりますが、介護付有料老人ホームは要支援1~要介護5の人まで入居できるため、間口が広く、探しやすいと言えます。

今回は、介護付有料老人ホームの選び方を見ていきます。

介護付有料老人ホームの費用は?

首をかしげる老夫婦

気になる介護付有料老人ホームの費用ですが、前払金と月額費用の2本立てが基本です。前払金とは、想定居住期間分の家賃を前払いするものです。もともと有料老人ホームは、入居時に家賃を全額支払うことで、月額費用を安く抑える支払い方式でスタートしました。ところが、近年は前払金ナシや一部前払い方式を採用している施設が多くなっています。また、いくつかの支払い方式から、自分に合ったタイプを選択できるところもあります。

前払金は、年齢により想定居住期間を数段階に分けて設定されている施設もあります。そのような施設では、同じ居室を契約しても、65歳や70歳といった比較的若い年齢で入居する場合は想定居住期間が長くなるであろうという前提で高額に、90歳を超えてから入居する場合は想定居住期間が短いであろうという前提で安くなっています。

介護体制やサービスの内容、立地により、費用が異なる

リハビリ 介護付有料老人ホームの費用は、提供される介護体制やサービスの充実度によっても異なります。3人の要介護者を1人の介護職員が介護する「3:1」という介護体制が国の決めた最低基準ですが、「2:1」や「1.5:1」など手厚い介護体制を敷く施設もあります。また、医療機関への送迎・院内の付き添い、個別リハビリ、食事やアクティビティ(※)が充実した施設もあり、このような場合は、費用が高めに設定されています。また、一般的に、東京都内など地価の高いエリアに立地し、不動産価値が高く、設備が充実している施設は高額です。

前払金は0~数千万円、月額費用は大体15~30万円が目安です。ただし、家賃が高額の場合は月額50万円を超える施設もありますので、施設ごとのウェブサイトなど確認してください。

試算は、親御さんの入居年齢と身体状況をもとに、居住期間(年数)を想定し、最期まで介護付有料老人ホームで暮らした場合、前払金、月額費用を合わせていくら必要になるのかを計算します。それと同時に、年金などの毎月の収入と預貯金などの金融資産、また、自宅を売却して入居費用に充当する場合はその金額も合わせて、全部でいくらくらいあるのか、いくらくらいまでなら介護施設の費用として支払えるのかという双方向から試算し、資金的に無理のない範囲を決めましょう。

(※)アクティビティとは、歌や体操、ゲーム、創作など、楽しみながら身体機能を活性化できるレクリエーションのこと。


希望要件を箇条書きにし、“優先順位”をつける

急いで決めなければならないケースもありますが、まずはどのような施設ライフを送りたいか、希望要件を書き出します。家族の住まいに近い、手厚い介護サービスを受けられる、医療ケアが充実している、静かな郊外型など。親御さんによっては、具体的にこういう施設がいいとはっきり口にしない親御さんもいらっしゃるかもしれません。そのような場合は「食事がおいしいところがいいね」「お部屋は暖かくて、明るいところがいいね」などと話しているうちに、本音が出てくることもあるでしょう。それらの中で、どうしてもこの要件ははずせないという項目に、優先順位を1、2・・・と付けていきます。経済的に合致する範囲内で、その要件を満たす施設をピックアップして見学のアポを取りましょう。

候補施設の「見学」は必須、チェックすべきポイントはココ!

ソファに座っている親子

施設見学時は、できれば2人以上で出かけます。新型コロナウイルス下の現在は大人数での見学はできませんが、見落としのないよう1人よりは2人の目で確認することをおすすめします。見学中は五感をフルに働かせて、嫌な臭いはしないか、清掃は行き届いているか、入居者や職員はいきいきと生活しているか、雰囲気は温かいかなどを確認します。気になる点があれば質問し、それに対して的確な回答を得られるかも含め、候補施設を絞り込みましょう。

「体験入居」が要件となっている施設が多い

候補施設を絞り込んだら、体験入居に進みましょう。体験入居は1泊数千円~1万円程度と有料ですが、必須要件となっている施設もあります。施設側も入居希望者の身体状況(どの程度の介護が必要か)や認知症の有無だけでなく、医療面での対応の可否もチェックしています。入居希望者がその施設の生活を気に入っても、医療ケアが困難な場合は、施設側から断られるケースもあります。体験入居の結果、双方が合意すれば、入居契約に進みます。

預けっぱなしにせず、定期的に訪問し、家族は心のケアを担当する

施設で再会する家族

さいごに、親御さんが介護施設に入居できたからといって、預けっぱなしですべてお任せにするのではなく、定期的に訪問したり、電話で様子をうかがったりと、フォローは大切です。高齢になり、介護施設という未知の世界へ転居するわけですから、さまざまな不安や職員さんには直接言えない要望なども出てくるかもしれません。「身体ケアはお任せしても、心のケアは家族が行う」と考えておくことが、親御さんの充実した施設ライフにつながります。

ファイナンシャル・プランナー、マネーライター 岡本 典子 さん

教えていただいた方

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、終活アドバイザー

岡本 典子 さん

【プロフィール】

FPリフレッシュ代表。シニアライフを安心して暮らせる高齢者施設・住宅への住み替えコンサルティングに特化したファイナンシャル・プランナー(CFP)。セミナー講師・講演や執筆、監修も行う。「高齢期のお金を考える会」メンバー。著書に『イザ!というとき困らないための 親の介護と自分の老後ガイドブック』(ビジネス教育出版社)など。

  • ※掲載している内容は、2022年4月28日時点のものです。
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