共済と保険の違いは?メリット・デメリットや特徴をわかりやすく解説

「自分に合った保障を選びたい」と考える際、共済と保険の違いについて疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。共済は保険と似ているようで、運営の仕組みや保障内容に大きな違いがあります。どちらがいいか検討する際は、どのような人に適しているのかを知ることが大切です。
この記事では、共済の基本的な仕組みや保険との違いのほか、共済のメリット・デメリット、それぞれの保障に適している人の特徴を解説します。
共済の基本的な仕組み
共済は、地域や団体に属する人々が万が一のときに助け合う「相互扶助」の考え方に基づいて成り立っています。運営は非営利団体である協同組合が担い、加入者は「組合員」として制度に参加します。掛金を出し合い、加入者の誰かに事故や病気などのリスクが発生した際、共済金が支払われる仕組みです。
共済には「4大共済」といわれる、下記のような団体があります。
■共済の代表的な団体
| 共済団体 | 特徴 |
|---|---|
| こくみん共済coop |
|
| 都道府県民共済 |
|
| JA共済 |
|
| コープ共済 |
|
共済と保険の違い
共済と保険はどちらも「万が一に備える」制度ですが、その仕組みには大きな違いがあります。
■共済と保険の主な違い
| 共済 | 保険 | |
|---|---|---|
| 運営団体 | 非営利の協同組合 | 営利企業(保険会社) |
| 運営目的 | 組合員同士の助け合い | 営利目的の商品提供 |
| 加入対象・条件 | 特定の団体・地域・属性の構成員 | 加入対象の範囲が広い |
| 保障内容・範囲 | 保険と比べてシンプルで選択肢が限定的 | 選択肢が多く、自由度が高い |
| 用語 | 「掛金」「共済金」「組合員」など助け合いを前提とした用語 | 「保険料」「保険金」「契約者」など契約関係を明確にする用語 |
ここでは、上記の違いについて詳しく確認していきましょう。
運営団体と運営目的
共済と保険は、運営する団体の性質や制度の目的に明確な違いがあります。
共済は非営利の協同組合によって運営され、組合員同士の助け合いを目的としています。余剰が生じた場合は、組合員に還元される仕組みです。
一方、保険は民間の保険会社が運営しており、加入者の状況に合わせて保障内容をカスタマイズしやすいのが特徴です。
加入対象と条件
共済と保険は、加入対象と条件が異なります。
共済は、特定の団体や地域など、一定の条件を満たす人が加入できる仕組みです。たとえば、都道府県民共済は、原則として「居住している都道府県」または「勤務先がある都道府県」の共済を選択して加入します。また、JA共済は農業協同組合の組合員、コープ共済は生活協同組合の組合員であることが加入条件です。
一方、保険加入については、団体や地域などの条件はありません。加入できる年齢条件を満たし、健康状態に応じた審査に通過すれば契約が可能です。商品によっては条件付きの加入や保険料の変動があるものの、一般的には共済より柔軟性があります。
保障内容と保障範囲
共済と保険は、保障についても違いがあります。
共済は、保障の仕組みが簡潔で選択肢が限られているのが特徴です。たとえば、医療共済では入院や手術の保障が一定額で定められ、特約の数も限られています。その反面、保障額が比較的少なく、先進医療への対応が難しい場合もある点に注意が必要です。また、死亡保障や介護保障も必要最低限にとどまる傾向があります。
一方、保険は商品の選択肢が多く、加入者のライフスタイルや目的に応じてプランや特約を柔軟に選べます。たとえば、入院日額や手術給付金のタイプを選択できたり、がん特約・女性疾病特約・先進医療特約などを組み合わせたりすることで、ニーズに合わせた保障にすることが可能です。
用語の使い方
共済と保険は、類似した制度でありながら使用する用語が異なります。
共済では保険料にあたる金額を「掛金」、保険金に相当する支払金を「共済金」と呼びます。また、加入者は「契約者」ではなく「組合員」と表現され、あくまで助け合いの仕組みの一員として位置付けられているのが特徴です。
一方、保険では「保険料」「保険金」「契約者」「被保険者」などの用語が用いられ、契約に基づいてそれぞれの役割が明確に区分されています。
共済のメリット
共済の特徴を踏まえたうえで、共済を利用することによって得られるメリットについて見ていきましょう。
掛金が比較的安い
共済は非営利組織であり、貯蓄性のない掛け捨てタイプが多いことから、掛金も安価に設定される傾向があります。保障は最低限でよいと考える人にとっては、毎月の負担が少ない保障の手段といえるでしょう。
掛金が一律の場合もある
一部の共済では、年齢や性別に関係なく掛金が一律に設定されている商品もあります。同じ保障内容であれば誰でも同じ掛金で加入できる仕組みです。
割戻金を受け取れる場合がある
共済には非営利団体ならではの制度として、決算時に剰余金が出た場合、加入者に返金する「割戻金」があります。ただし、剰余金が出ない年は割戻金が支払われない場合もあるため、注意しましょう。
共済のデメリット
共済にはさまざまなメリットがある一方で、注意しておきたい点もあります。制度の特性上、保険と比べていくつかの制限があるため、加入前にしっかり確認しておくことが大切です。ここでは、共済のデメリットを紹介します。
保障内容が限定されることも多い
共済は、保障内容が限定的なことも多く、入院日額や死亡保障額が民間保険と比較して少ない場合もあります。高額な医療費や入院費が発生するケースでは、保障が不十分と感じることもあるでしょう。
商品ラインナップや自由度が少ない
共済は、保険に比べて選べる商品や特約が少なく、自分に合った保障を選択しにくいといったデメリットもあります。必要な保障を柔軟に組み合わせたい場合は、物足りなさを感じるかもしれません。
保険であれば、がん保険、学資保険、個人年金保険などさまざまな種類から選択できますが、共済の場合は、基本的な生命保障や医療保障、火災保障といった限定的な商品展開となっています。
高齢になると保障が下がる場合もある
多くの共済では、70歳や80歳など一定の年齢を超えると、入院や死亡時の保障額は減額されるといった設計が一般的です。高齢期にこそ手厚い保障が必要と考える人にとっては、デメリットとなるでしょう。
共済が向いている人の特徴
では、共済はどのような人に適しているのでしょうか。共済の仕組みを踏まえ、利用に適している人の特徴を紹介します。
必要最低限の保障で十分と考える人
共済は、最低限の保障があれば安心と考える人に適した制度です。たとえば、貯蓄に余裕がある人であれば、共済の保障でも十分に対応できる場合があります。掛金が比較的安く、保障内容もシンプルなため、コストを抑えて最低限の備えを持ちたい人にとって、共済は合理的な選択肢といえるでしょう。
家計の負担をできるだけ抑えたい人
毎月の支出をできるだけ抑えたい人にとって、共済の安価な掛金は大きなメリットとなります。たとえば住宅ローンの返済がある人など、家計に余裕がない場合には、セーフティネットとして役立つこともあるでしょう。
加入している保険に保障を追加したい人
すでに保険に加入しているものの、「もう少しだけ保障を足したい」という場合には、共済を補完的に活用するのも有効です。少額の掛金で必要な保障を補えるため、無駄なく効率的に備えを強化できます。
保険が向いている人の特徴
一方、下記のような人には保険が適していると考えられます。詳しく見ていきましょう。
手厚い保障を求めている人
保険が向いている人の特徴の1つは、入院・手術費用や死亡保障に加え、がんなど特定疾病への備えも含め、手厚い保障を求めているケースです。特に、重い病気への備えや先進医療、長期間の収入保障を重視する場合には、充実した保険プランが有力な選択肢となります。
終身保障や貯蓄性を重視する人
将来の資産形成や老後保障も見据えるなら、終身型・貯蓄型保険を選べる保険が適しています。終身保険、個人年金保険、学資保険などは保障と同時に資産形成もできるため、長期的な視点で見ると、有効な手段といえるでしょう。
ライフステージごとの保障を選択したい人
結婚や出産のほか、子どもの成長、退職後の生活など、ライフステージの変化に応じて保障を柔軟に見直したい場合には、保険が対応しやすいでしょう。
保険は、プランや特約の選択肢が多く、必要に応じて選べるため、将来の変化に備えやすい点がメリットです。ライフステージに応じた保障を重視する人にとって、選択肢の1つとして適しています。
共済と保険の違いを理解して、自分に合った保障を選ぼう

共済と保険は、どちらも万が一に備えるための制度ですが、成り立ちや目的、商品設計には大きな違いがあります。コスト重視でシンプルな保障を求めるなら共済、柔軟性や手厚い保障を重視するなら保険といった選択肢が考えられます。
自分のライフスタイルや必要とする保障内容に応じて、どちらを選ぶべきかを見極めることが大切です。まずは「どのような備えが必要か」を整理し、それぞれの特徴を踏まえたうえで、納得のいく選択をしましょう。

ファイナンシャル・プランナー
辻田 陽子 さん
FPサテライト所属ファイナンシャル・プランナー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種、日商簿記2級。
税理士事務所、金融機関での経験を経て、FP資格を取得。それぞれのライフイベントでのお金の不安や悩みを減らし、人々がより豊かで自由な人生を送る手助けをすべく活動中。
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