いきいき生活の知恵
第11回 【高齢期のお金を考える会】
キャッシュレス決済を賢く取り入れ、年金生活をより安全&お得に
ファイナンシャル・プランナー(以下、FP)畠中雅子さんが主宰する「高齢期のお金を考える会」会員FPの方々によるリレーコラム第3回。
今回は、女性誌を中心にマネー記事を執筆するほか、家計管理のセミナー講師としても活躍されている大上ミカさんに年金生活における「キャッシュレス決済の活用方法」について教えていただきます。
教えていただいた方
マネーライター、ファイナンシャル・プランナー
大上 ミカ さん
進むお財布のデジタル化。総務省も高齢者向けの講習を実施
クレジットカードや電子マネー、「◯◯ペイ」と呼ばれるコード決済など、キャッシュレス決済の利用が広がっています。
総務省では、今年6月から高齢者向けにキャッシュレス決済アプリの使い方やマイナンバーカードの申請方法など、スマートフォンを活用する講習会を開始。今後5年で延べ1000万人の受講を目指しており、年金生活におけるお財布のデジタル化は、さらに進んでいくと予想されます。
年金生活におけるキャッシュレス決済のメリットとは?
キャッシュレス決済を活用すると、ポイント還元などの特典を受けられるのがメリットです。さらに、
- 多額の現金を持ち歩かなくて済み、盗難や紛失のリスクを減らせる
- レジでの支払いを時短でき、現金の数え間違いも防げる
- 銀行にお金をおろしに行く手間を省ける
- スマートフォンひとつ、カード1枚で支払いができる
といった利便性があるのも、うれしいポイントですね。
お財布の賢いキャッシュレス化は、決済のリストラがカギ
一方で、「不正利用が心配」「使い方がわからない」「ムダに使いすぎてしまいそう」と、不安な声もあります。特に、ここ数年で続々と登場した「◯◯ペイ(コード決済)」は、あふれる情報に戸惑い、「お得そうで気になるけど、手を出しにくい」と感じている方も多いのではないでしょうか。
実際、いくらお得で便利でも、キャッシュレス決済をむやみに増やすのは、おすすめできません。数が増えると、支出の管理が追いつかなくなるだけでなく、使わなくなったカードの年会費を延々と払い続けたり、チャージした残高を使い忘れたりし、ムダが増す結果になりかねないためです。
キャッシュレス決済を安全に使いつつ、「お得」や「利便性」を享受するために大切なポイントは2つ。1つは数をしぼること、もう1つは基本的なセキュリティ対策を怠らないことです。それぞれご紹介します。
1.キャッシュレス決済の数をしぼる
手持ちのキャッシュレスをリスト化する
まず、手持ちのキャッシュレス決済をすべて書き出してみましょう。
クレジットカードは、引き落としの口座や日にち、年会費等を明記。銀行のキャッシュカードにクレジット機能やデビット機能がついているものもリストアップしておきましょう。
電子マネーやコード決済は、チャージ方法をメモ。銀行口座やクレジットカードの連携先を書きます。
できれば利用履歴を確認し、過去1年で使った金額や、貯まったポイントも書き出すとより客観的に整理しやすくなります。
でき上がったリストを眺めてみると、思った以上に多くのキャッシュレス決済を使い、お金の流れが複雑になっていることに気づく方も多いのではないでしょうか。
あまり使わないキャッシュレスはリストラを
書き出した中で、最もよく使うキャッシュレスはどれでしょうか。活用度で、順位をつけてみましょう。
順位が低いキャッシュレス決済は、手放す方向で検討を。利用額が少ないのに年会費がかかるクレジットカードや、あまり使わない電子マネー類はリストラ候補にします。特に、銀行のキャッシュカードでクレジット機能がついているものは要注意。キャッシュカードとしてしか使っていないのに、カードの年会費を払っている可能性があります。
キャッシュレス決済は少ないほどお金の流れがシンプルになり、管理が行き届きます。少ないほど、その決済のお得な使い方にも詳しくなれ、結果的にポイントもまとまるため合理的です。引き落とし口座や、見るべき明細もしぼられるので、不正利用に気づきやすくなるメリットも見逃せません。
目安はクレジットカード1〜2枚、電子マネーやコード決済もメインを1つ。自分の生活圏で相性がよいものだけに徹底してしぼりこむのが、安心&お得なキャッシュレス生活の基本といえます。
2.セキュリティ対策
利用停止の連絡先を必ず控えておく
次に、セキュリティ対策です。基本的な安全対策を怠らないだけでも、多くのリスクからお財布を守れます。
まず、紛失や盗難にあった場合はすぐに利用停止の連絡が取れるよう、キャッシュレス決済の番号やID、連絡先を控えておきましょう。パスワードは一部を伏せ字にするなどし、自分や家族だけがわかるように工夫しておきます。こうした紛失や盗難のリスクや、管理の手間を考えても、キャッシュレス決済はなるべくしぼっておくほうがよいのです。
もちろん、スマートフォンには必ずロックを。ロック解除のパスワードは推測しにくいものにし、顔認証や指紋認証など、生体認証があるなら設定しておくと、よりセキュリティを高められます。
補償内容を確認。電子マネーには多額のチャージをしない
クレジットカードやコード決済は、クレジットカード会社や運営会社がそれぞれ不正利用に対する補償制度を設けています。この点は、盗まれたらそれきりの現金より安心といえるでしょう。ただし、補償される期間には制限があるため、こまめに利用明細をチェックすることが重要です。使いすぎにも気をつけられます。
一方、電子マネーは、不正利用の補償がないものが多いです。利用停止の手続きをすればその時点の残高は凍結されますが、念のため、多額の入金やオートチャージは避けるほうが賢明です。
いずれにしても、自分が使うキャッシュレスの補償制度については、一度確認しておき、より安全な使い方を考えるようにしたいものです。
ログインはメールではなく、公式サイトから行う
気をつけたいのは、カードや電子マネーの会社になりすましたメールです。「利用停止のご連絡」「アカウント情報更新のお願い」など、巧妙に開封を誘導するところが厄介で、うっかりURLをクリックすると、パスワードやIDを要求され、そのまま個人情報を盗まれる可能性が高いです。少しでも怪しいと感じたら、面倒でも、必ずウェブブラウザから公式サイトに行き、そこからログインするようにしてください。
さいごに
基本的なセキュリティ対策を怠らず、管理して使えば、キャッシュレス決済は生活を快適にしてくれる便利なものです。デジタル時代の年金生活に向けて、一度お財布を整理してみませんか?
教えていただいた方
マネーライター、ファイナンシャル・プランナー
大上 ミカ さん
- ※掲載している内容は、2021年11月5日時点のものです。
- ※本稿は、各々の分野の専門家に作成いただいております。 本稿の内容と意見は各々の筆者に属するものであり、当社の公式見解を示すものではありません。
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【プロフィール】
女性誌を中心にマネー記事を執筆。全国各地の貯まる人を取材し続けるほか、FPとして記事の監修、家計管理のセミナー講師、相談業務などを行う。「高齢期のお金を考える会」メンバー。著書に『収入が増えなくても貯蓄が2倍になる方法』(リベラル社)など。
https://www.senior-moneyplan.com/