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【獣医師監修】猫のニキビ~あご周りにできるブツブツの原因と対処法・予防法~
猫のあごや口周りにできたブツブツは、挫瘡(ざそう)という肌の疾患で、「猫のニキビ」とも呼ばれています。この記事では猫のニキビの詳しい症状や原因、対処法などについて解説します。
猫のニキビができる場所と症状
猫のニキビはどの猫にもできる可能性があり、猫の性別や年齢、品種とはあまり関係がありません。また、体質によっては、再発を繰り返す猫もいます。まずは、猫のニキビができやすい場所や症状について解説します。
猫のニキビができる場所
猫のニキビが最もできやすい場所は、皮脂腺からの分泌物が多く毛づくろいをするのが難しいあごの下です。そのほか唇や口角にできることもあります。
ニキビの症状
症状は、重度に応じていくつかの段階に分けられます。
- 軽度の症状
- 皮脂が毛に絡み、黒い砂粒のように見えます。かゆがる様子はみられません。
- 中程度の症状
- さらに症状が悪化すると、毛が抜けて赤い斑点ができます。猫がかゆがったり、痛がったりすることもあります。その際、患部を家具などにこすりつけるような仕草をすることも。こうした状態に気付いたら、動物病院の受診をおすすめします。
- 重度の症状(膿み、二次症状など)
- ただれて出血したり、細菌感染を起こして膿んだりします。こうなると自宅ではケアできません。すぐに動物病院を受診しましょう。
原因と対策方法
猫のニキビの直接的な原因は、皮脂腺からの分泌物が詰まり、炎症を起こすことです。ほかに原因として考えられるのは、食器などの雑菌繁殖やアレルギー、精神的なストレスなどさまざま。ここではその原因ごとの対策を紹介します。
ニキビの主な原因 | 注意点・チェックポイント | 対策 |
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食器に繁殖した雑菌 |
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食器素材のアレルギー |
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ストレス |
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毛づくろい不足 |
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ホルモンバランスの乱れ |
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フードが合わない |
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ニキビダニ症(毛包虫症) |
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食器に繁殖した雑菌
毎日フードや水を入れる食器は、食べ残しや猫の唾液などで雑菌が繁殖しやすくなっています。特にプラスチック容器は傷が付きやすいため、洗っても汚れが落ち切らないことが多く、細菌が繁殖したりカビが生えたりするので注意が必要です。雑菌が繁殖した食器を使うことで、猫のあごの下周辺に雑菌が付着し炎症を引き起こします。
対策として、傷が付きにくいガラスや陶器製の食器に変更し、こまめに洗い清潔にします。水も最低1日一度は交換しましょう。
食器素材のアレルギー
プラスチックやステンレスなど食器の素材そのものにアレルギーがある猫もいます。アレルギーが原因となって、猫ニキビができてしまうことがあるので、アレルギーが生じにくいガラスや陶器製食器に変更しましょう。
ストレス
引っ越しをした、新しく子猫が来た、飼い主が忙しくてかまってもらえない、好きな場所をほかの猫にとられたなど、さまざまな環境の変化が猫にストレスをもたらします。猫を取り巻く生活環境を見直して、ストレスの原因はないかよく観察してみましょう。実は猫がくつろぐお気に入りの窓辺に、近所の苦手な猫が来ていたなど、飼い主が気付いていなかったことがあるかもしれません。
ストレスの原因がわかったら、落ち着いて過ごせる場所を作ったり、遊ぶ時間を増やしたり工夫してみてください。なかなか改善されない場合は、かかりつけの動物病院に相談しましょう。
毛づくろい不足
あごの下を含め、口の周辺は猫が自分で毛づくろいをしにくい場所です。猫は前足をなめて、顔を洗いますが、これが上手にできない猫もいます。また、あごの下は自分の舌がどうしても届かないので、食べカスやよだれが付いたままになりがちです。特にウェットフードは、被毛に付着したままになりやすいので注意しましょう。汚れていたら、お湯で濡らした清潔なコットンで軽く拭き取ります。
また、猫がいつも敷物にあごを乗せて寝ていると、そこに汚れがついて雑菌が繁殖している可能性があります。敷物は、清潔でやわらかいものに変え、こまめに洗濯してあげましょう。
ホルモンバランスの乱れ
避妊・去勢手術のあとに、ホルモンバランスの乱れが生じて猫ニキビができることもあります。手術後に急に猫ニキビができたら、かかりつけの動物病院に相談しましょう。
フードが合わない
フードそのものが猫に合っていないことで、ニキビができることもあります。食器などを清潔にしてみても、ホルモンバランスの乱れやストレスが見当たらなくても猫ニキビができる場合は、一度フードを見直してみましょう。特に脂肪分が多いフードでニキビができることがあるようです。ただし、脂肪分が少なすぎても、皮脂が分泌されすぎてニキビができることもあります。
今までのフードからいきなり新しいフードに変更すると、お腹を壊す恐れもあります。様子をみながら少しずつ新しいフードに変えていきます。食べ物にアレルギーがある場合は判断や対応が難しいので、動物病院に必ず相談しましょう。
ニキビダニ症(毛包虫症)
ニキビダニ症(毛包虫症)は、ニキビダニ(毛包虫)が猫の毛包(毛の根元)に寄生することによって皮膚に炎症が生じる病気で、これが原因でニキビができる場合もあります。ニキビダニは、健康な猫の皮膚にもわずかですが存在している寄生虫です。猫から猫へ病気がうつることはなく、免疫力が低下しているときなどに炎症を起こすと考えられているため、ほかの疾患がある可能性もあります。
ニキビダニ症の症状がみられる場合は必ず動物病院を受診し、治療しましょう。
ブツブツになった肌のケア方法
猫ニキビができてしまったら、飼い主はどうしたらいいのでしょうか。症状が軽度なうちは自分の手でケアできますが、ここで注意したいのは次の2点です。
【適切なケア方法】
清潔なコットンやガーゼをぬるま湯で濡らし、ニキビ部分をやさしく拭き取ります。ポイントはゴシゴシこすらないことです。あごの下や口の周囲を触られるのを嫌がる猫は多いので、手短に済ませてあげましょう。
シャンプーのときに、あごの下をやさしく洗うのも効果的です。口に入ってしまう恐れがあるので、なめても害のないシャンプーで洗うと安心です。シャンプー成分が残っていると毛や皮膚によくないので、すすぎはしっかりと行いましょう。
まとめ
猫のニキビは、毛づくろいしにくいあごの下に特にできやすいものです。汚れや黒いブツブツがみられたら、ぬるま湯で湿らせた清潔なコットンやガーゼで拭き取ってあげましょう。
同時に食器やフードの見直し、ストレスの有無やホルモンバランスの乱れなども確認します。ニキビダニなどが原因の場合や、再発を繰り返す猫は、何らかの基礎疾患があるかもしれません。一度、かかりつけの動物病院を受診することをおすすめします。
監修者プロフィール
獣医師:佐々木伸雄 先生
東京大学卒業後、同大学の獣医学科、動物医療センターで動物外科の教員として勤務。主な対象動物は犬、猫であるが、牛、馬なども診療。研究に関しては、動物の腫瘍関連の研究や骨の再生医療など。2012年3月、同大を定年退職。この間、日本獣医学会理事長、農林水産省獣医事審議会会長などを歴任。
- ※掲載している内容は、2019年9月24日時点のものです。
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