大切なペットとの“いきいき”とした暮らしのために
犬猫お役立ち情報
犬の生活
【獣医師監修】子犬のワクチンは何種類?散歩に出かけられるのはいつから?

かわいい子犬を家に迎えたら、いつからお外に出せるの?早く愛犬のお散歩デビューをしたい!という飼い主さんは多いのではないでしょうか?しかし、さまざまな感染症から愛犬を守るために、まずはワクチンのことを考えなければいけません。必ず動物病院でワクチン接種を行い、獣医師のOKが出たらお散歩に出かけましょう。ここでは、生後何か月からワクチンをするべきか、ワクチン接種後の注意点などを解説していきます。
子犬のうちにワクチンをする理由って?混合ワクチンの種類を解説

子犬は生後約2か月頃からワクチンを接種する必要があります。なぜ子犬のうちにワクチンを打つ必要があるのか、またさまざまな種類の中からどのワクチンを選べばいいのかを解説していきます。
ワクチンを打つのはなぜ?
なぜ子犬の時期にワクチンが必要なの?
生後1か月半~3か月頃の子犬は、初乳からの免疫が徐々に減っていくため、いろんな感染症にかかるリスクが出てきます。これを予防するために子犬へのワクチン接種が必要となります。
そもそも犬にはどうしてワクチンが必要なの?
子犬に限らず愛犬が恐ろしい病気にかからないためにも、また犬に感染する可能性のある病気が蔓延することを防ぐためにも、犬へのワクチンは必要です。
ワクチンが必要な感染症とは?
ワクチンには、法律で義務付けられている狂犬病予防注射や、すべての犬が接種すべきだと考えられている「コアワクチン」と、任意で接種する「ノンコアワクチン」があります。
コアワクチンとは、犬ジステンパー、犬パルボウイルス、伝染性肝炎など、犬にとって危険で死の恐れもある病気に対するワクチンで、ワクチンを接種することが強く勧められています。狂犬病もコアワクチンに入ります。
ノンコアワクチンとは、感染リスクのある病気に対するワクチンのことです。地域で流行しているなど、特定の病気に感染する可能性のある場合や飼育環境などによって、愛犬を病気から守るために接種しておくと安心です。
病名 | 義務 | コアワクチン | ノンコアワクチン |
---|---|---|---|
狂犬病 | ● | ● | |
ジステンパー | ● | ||
伝染性肝炎 | ● | ||
アデノウイルス2型感染症 | ● | ||
パルボウイルス感染症 | ● | ||
コロナウイルス感染症 | ● | ||
パラインフルエンザ | ● | ||
レプトスピラ感染症 | ● |
- 狂犬病
- 狂犬病は発症すると致死率100%の恐ろしい感染症です。人を含めたすべての哺乳類に感染する恐れのある人畜共通感染症で、生後90日以降の子犬を含むすべての飼い犬に対して、狂犬病予防注射が法律で義務付けられています。
- ジステンパー
- ジステンパーは、ワクチン未接種の子犬の場合、急激な症状がみられ、発症すると死亡率が高い病気です。保菌犬のよだれや鼻水、排泄物などの飛沫から感染します。
- 伝染性肝炎
- 伝染性肝炎は、肝臓などで感染を起こします。肝炎は症状に気が付きにくく、ワクチン未接種の子犬の場合、急に具合が悪くなり死に至ることもあります。
- アデノウイルス2型感染症
- アデノウイルス2型感染症は、ケンネルコフとも呼ばれ、乾いた咳をするのが特徴です。アデノウイルスのワクチンを接種することで、伝染性肝炎とアデノウイルス2型感染症の両方を予防することができます。
- パルボウイルス感染症
- パルボウイルス感染症は、子犬やシニア犬で感染すると死亡する恐れもある病気です。嘔吐や激しい下痢、ケチャップのような血便を起こすことがあります。
- コロナウイルス感染症
- コロナウイルス感染症は、保菌している犬の糞から感染する病気です。症状は軽いことが多いですが、子犬の場合は症状が強く、ほかのウイルスの感染を併発すると脱水を起こすなど命の危険を伴うことがあります。
- パラインフルエンザ
- パラインフルエンザだけの感染では、症状がわからないこともありますが、ほかのウイルスとの感染を併発するとアデノウイルス2型感染症(ケンネルコフ)の原因になることがあります。
- レプトスピラ感染症
- レプトスピラ感染症は、ネズミなどのげっ歯類、野生動物、牛、馬、豚などの家畜、ダニやノミの寄生虫の「尿」から感染し、症状は軽いものから、腎炎、肝炎など重症になることもあります。都市部でも発症例が多数あることに加え、人間にも感染する可能性があるため注意が必要です。その地域の発生状況などに関しては、獣医師に確認するとよいでしょう。
混合ワクチンの種類と必要な接種数は?値段はいくらぐらい?
子犬にワクチンを接種しなければならないのは知っているけれど、混合ワクチンにはたくさん種類があってよくわからない…という方も多いでしょう。
ここでは、混合ワクチンについての基礎を解説していきます。
混合ワクチンは、2〜11種類など複数のワクチンが含まれていますが、製薬会社によって、値段や含まれるワクチンの種類が異なる場合もあります。
単体(単独)ワクチン:特定の感染症の予防を目的とするワクチン
混合ワクチン:複数の感染症を予防する目的のワクチンで、製薬会社によって種類は異なる
子犬はどのワクチンを選ぶべきか
子犬の場合、一度にたくさんの種類のワクチンが体内に入ると副作用のリスクが高まる可能性もあります。愛犬にどのワクチンを接種するかは、必ず獣医師に相談しましょう。
混合ワクチンに含まれる種類の例
混合2種 | ジステンパーとパルボウイルス感染症(約3,000円〜5,000円) |
---|---|
混合3種 | ジステンパーと伝染性肝炎、アデノウイルス2型感染症 (約3,000円〜5,000円) |
混合4種 | 上記3種とパラインフルエンザ(約5,000〜6,000円) |
混合5種 | 上記4種とパルボウイルス感染症(約5,000〜7,000円) |
混合6種 | 上記5種とコロナウイルス感染症(約5,000円〜8,000円) |
混合7種 | 上記5種とレプトスピラ感染症2種(約6,000円〜9,000円) |
混合8種 | 上記6種とレプトスピラ感染症2種(約7,000円〜10,000円) |
混合9種 | 上記6種とレプトスピラ感染症3種(約8,000円〜10,000円) |
混合10種 | 上記6種とレプトスピラ感染症4種(約8,000円〜12,000円) |
混合11種 | 上記6種とレプトスピラ感染症5種(約 8,000円〜12,000円) |
※内容や費用は製薬会社や動物病院によって異なります。
ワクチンの回数とお散歩デビューについて

子犬を引き取る際は、ワクチンを接種しているか、また何種類の混合ワクチンでいつ接種したのかを必ず確認してください。ブリーダーやペットショップから購入した場合は、2種以上の混合ワクチンがすでに接種済みであることが多くなります。その後のワクチンのスケジュールを獣医師と確認しておきましょう。
※すべての子犬が引き取る前にワクチン接種をしているとは限らないので、必ず混合ワクチンの接種歴を確認しましょう。
1回目のワクチン~お散歩OKまでのスケジュール
子犬を家族に迎えたら、動物病院で健康診断をしてもらうとよいでしょう。その際に、現在のワクチン接種状況を伝え、今後のワクチンのスケジュールについて獣医師とプログラムを組んでおくと、どれくらいの時期にお散歩デビューできるかの目安がわかります。
ワクチンのスケジュールにはさまざまな考え方があり、いつでなければならない!という決まりはありませんが、世界小動物獣医師会の「犬と猫のワクチネーションガイドライン」では、母犬の初乳からもらった移行抗体と呼ばれる免疫が薄れてくる生後6〜8週目に1回目のコアワクチン接種を行い、その後、免疫を確実なものとするために、生後16週以降までに2〜4週間隔での追加接種を行う「3回接種」が推奨されています。
理由としては、2回目のワクチンを打ったから安心というわけでなく、この頃に子犬の体に移行抗体が残っていると、2回目のワクチンの効果が機能していない可能性があるためです。
そこで、確実にワクチンの効果を機能させるために、3回目の接種を行います。
もし、移行抗体がなくなるタイミングとワクチンを接種していない時期が重なると、感染症にかかるリスクが高まるため、計画的に追加接種をすることで、子犬が恐ろしい感染症にかからないようにワクチンで予防をしているのです。
母親の初乳中の抗体価が高い場合や、最初のワクチンの接種時期によっては、2回のワクチン後にお散歩をOKとする場合もありますが、プログラムの途中でお散歩デビューをさせると病気にかかる可能性もゼロではありません。子犬の社会化のために、外の環境に早く慣れさせたい方や、ブリーダーが2回プログラムに合わせて1回目を接種している場合は、獣医師にリスクやその地域での伝染病の発症状況を確認してみましょう。外でほかの犬や犬を触った人と接触させない、抱っこ散歩をさせるといった予防策を行うことも大切ですが、いつからお散歩できるのかは必ずかかりつけの獣医師と相談すると安心です。
ワクチンプログラムを終えたら、いよいよ子犬とのお散歩デビューです!
ワクチン時に注意したいことと副作用
ワクチン接種後に体調を崩す子犬もいるので、当日は安静にし、愛犬の様子をしっかり観察しておきましょう。
ワクチン前に注意すること
ワクチン前のシャンプーや子犬が興奮する来客などは、犬の疲労やストレスにつながるので控えましょう。もし、以前にワクチンの副作用が出たことがある、直近で治療を受けた、ほかのワクチン接種を行っているなどの場合は、診察の前に必ず獣医師に伝えるようにしてください。人と同様、健康面で問題ない場合にワクチンを受けることが大切です。
ワクチン接種当日
ワクチン当日は、愛犬が元気であるかをチェックしてから接種を行いましょう。接種後は、顔が腫れる、体が赤くなる、嘔吐や下痢、発熱、元気がない、フラフラするといった「全身的な」副作用が出る可能性もあります。当日は激しい運動をさせないようにしましょう。
ワクチン接種から2〜3日後
ワクチンを打って数日は、犬にストレスがかかることやシャンプーは控えましょう。2〜3日経って、具合が悪くなる、食欲がなくなる、注射した部分が腫れるといった副作用がみられる場合もあります。
まとめ
愛犬の命を守るために必要なワクチン。うっかり忘れてしまうとお散歩デビューが遅くなってしまう可能性もあります。子犬を病気から守るためにも、獣医師と相談して、スケジュール通りにワクチン接種を行いましょう。

監修者プロフィール
獣医師:佐々木伸雄 先生
東京大学卒業後、同大学の獣医学科、動物医療センターで動物外科の教員として勤務。主な対象動物は犬、猫であるが、牛、馬なども診療。研究に関しては、動物の腫瘍関連の研究や骨の再生医療など。2012年3月、同大を定年退職。この間、日本獣医学会理事長、農林水産省獣医事審議会会長などを歴任。
- ※掲載している内容は、2019年5月28日時点のものです。
- ※ページ内のコンテンツの転載を禁止します。