大切なペットとの“いきいき”とした暮らしのために
犬猫お役立ち情報
猫の生活
【獣医師監修】猫の誤飲が疑われるときのチェック項目と対処法
飼い猫の事故の中で、起こりやすいものの1つが誤飲。特に年齢の若い猫は食欲や興味などから、誤飲や誤食をすることが多い傾向にあります。この記事では、あなたの愛猫に誤飲の可能性があるときの判断の仕方や対処方法について紹介します。
誤飲しちゃったかも…!? こんな症状があれば要注意
もしあなたの大切な猫が誤飲をしてしまった可能性がある場合、まずは冷静に状況を確認しましょう。誤飲・誤食をすると、次のような症状が見られることがあります。
特に、誤飲しているところを見ていなかったときは、下のリストを参考にして猫の状態をチェックしてください。元気だった猫が急に下記のような症状を示したり、明確な症状がなくても「おかしいな」「いつもと違う」と思ったりしたときは、早めに動物病院を受診しましょう。
部屋の中で誤飲した形跡があるかどうかもチェック
上に挙げたような症状がない場合でも、誤飲している可能性があります。たとえば次のような状況に気付いた場合は、猫の様子に注意してください。
猫が誤飲しやすいもの
猫が誤飲しやすいものには、次のようなものがあります。興味を持ったものを口にしているうちにザラザラした舌によって、異物がのどの奥のほうにいってしまうことがあるので注意が必要です。
- 靴ひも、洋服に付いたひも(ビニールひもにも要注意)
- 洋服のほつれから出た糸にも気を付けましょう。ほつれに気付いたら、ハサミで切っておきます。
- カーテン、毛布、敷物など布製品
- 布をなめているうちにほつれて、糸や布を飲み込んでしまいます。
- ペットシーツ
- トイレに設置したペットシーツをかじってしまうことも。
- スポンジやバスマット
- スポンジの感触が好きで、噛んでいるうちにかけらを飲み込んでしまうことがあります。
- 猫用おもちゃ
- 小さなパーツが付いている、ひもが付いているものは注意が必要です。また動物の本物の毛でできた、小さなおもちゃも飲み込む危険があります。
- ヘアゴム
- 髪を結ぶことがある飼い主さんや家族がいる場合は、特に気を付けてください。
- 画びょう・ホッチキスの針
- どちらも小さいので、遊んでいるうちに飲み込んでしまうことがあります。
- ティッシュペーパーやウェットティッシュ
- ティッシュケースから出して遊んでいるうちに、飲み込む危険があります。ティッシュケースに入るのが好きな猫は、特に気を付けましょう。
- 小さなアクセサリー・ストラップなど
- ピアスなどのアクセサリーや、ぶらぶら揺れるストラップに興味を持つことも。
- ビニール袋、お菓子や食品のビニールパッケージ、ラップ
- ビニール袋に入るのが好きな猫、ビニールをなめるのが好きな猫には特に気を付けてあげましょう。肉や魚のにおいが付いた、ビニールやラップも要注意です。
- 毛糸、糸、針(ソーイング)
- 猫は毛糸で遊ぶイメージがありますが、大変危険です。針が付いたままの糸も必ず片付けましょう。
- 釣り用の糸や針
- 外に出る猫では、川べりなどに落ちているものを誤飲してしまうことがあります。
- 保冷剤
- 特に夏場、猫の体を冷やすために置いたものを噛んでしまうことがあります。体を冷やしたい場合は、ペットボトルを凍らせたものに変更しましょう。
誤飲が疑われる場合は、すぐ獣医師に相談を
誤飲した可能性が高い場合、命の危険につながることもあり、また入院や手術が必要なこともあります。早めに獣医師に相談しましょう。誤飲したことがわかっている場合は、たとえ症状が出ていなくても受診してください。
病院での主な診断法と処置方法
症状や重症度によって異なりますが、病院では診断の上、次のような処置が行われます。わからないことや不安なことは、獣医師に質問しましょう。
診断法
まず、胃を中心によく触診します。大きい異物であれば、触診できます。また、超音波診断も用いられます。もしレントゲン写真に写るものであれば、レントゲン検査が極めて有用です。また、猫の全身症状をチェックします。嘔吐が続いていると脱水や電解質バランスが崩れているため、その治療が必要です(通常は点滴をします)。腎機能のチェックも必須です。
その上で処置の内容を決定します。麻酔・手術が必要かどうか、その緊急性はどの程度か…などが特に重要です。
治療法
- 嘔吐を促す
- 異物が胃の中にとどまっていて、かつ食道をスムーズに通過しそうな異物の場合、吐かせて出せる可能性があります。吐かせるには、催吐(さいと)剤(吐かせる薬)を点滴、注射します。嘔吐の間は、それがつかえてしまわないかどうか、きちんと観察する必要があり、入院になる場合があります。
- 内視鏡手術
- 内視鏡手術は、切開をしないで食道や胃の中の異物を取る処置です。たとえば、針や粘膜に引っかかっている異物など、多くの遺物は先端に鉗子の付いた内視鏡を口の中から入れ、異物を取り除くことができます。内視鏡手術でも全身麻酔を行います。
- 切開手術
- 胃の中の異物でも、内視鏡で摘出できないものは、手術が必要です。また、腸に異物がからまっている・腸閉塞を起こしている場合、極めて危険な異物で、切開手術になります。特にひも状の異物では、小腸がアコーディオン状になって折れ曲がった部分で穿孔していることがあるため、緊急手術が必須です。
その時点で無症状でも各種検査などで、腹腔内に異物があって、その後それが急速な症状の悪化を招く可能性がある場合は手術をすることがあります。 - 投薬
- 保冷剤の中身など、中毒を起こす危険性のある異物を飲み込んだ場合、薬物の作用を中和する拮抗剤や解毒剤を与えることがあります。
誤飲治療の費用はどのくらい?
動物病院によって異なりますが、だいたいの目安として実際にあった事例をご紹介します。このほかにも、検査代や薬代などが別途かかることがあります。
- ※実際に当社へご請求があった治療費用例です。
- ※治療の平均や水準を示すものではありません。
- ※動物病院によって、治療項目や金額は異なります。
誤飲を防ぐためにできること
猫の体だけでなく、治療費の面でも負担が大きい誤飲。誤飲から愛猫を守るための一番の対策は、日ごろから誤飲が起きないような飼育環境を整えることです。
まずは猫が食べてしまいそうなものは片付けましょう。おもちゃは簡単にほつれないもの、飲み込めない大きさのものを与えるようにします。ほつれたら、すぐに処分しましょう。小さなおもちゃやひもが付いた猫じゃらしは、飼い主さんと遊ぶときだけにします。遊び終わったら、手の届かない場所に片付けてください。
また退屈やストレスで、ビニールや布などをなめたり噛んだりする猫もいます。環境を見直して、ストレスがたまっていないかを確認することが大切です。かまいすぎていないか、逆に一緒に遊ぶ時間が減っていないか、トイレが汚れていないかなどもチェックしましょう。
まとめ
猫の誤飲対策は、とにかく猫が触れないように「片付ける」こと。とはいえちょっと目を離したすきに、なめたり噛んだりということもあります。
万が一誤飲したときは、急いで動物病院を受診しましょう。そのときは「いつ・何を・どのくらい」飲み込んだかを獣医師に伝えます。飲み込んだもののかけらや嘔吐物などがあれば、持って行きましょう。「はっきりわからないが、飲み込んだかもしれない」という場合も、上で紹介したチェックポイントを参考にセルフチェックし、動物病院に早めに連れて行くことが安心につながります。
監修者プロフィール
獣医師:佐々木伸雄 先生
東京大学卒業後、同大学の獣医学科、動物医療センターで動物外科の教員として勤務。主な対象動物は犬、猫であるが、牛、馬なども診療。研究に関しては、動物の腫瘍関連の研究や骨の再生医療など。2012年3月、同大を定年退職。この間、日本獣医学会理事長、農林水産省獣医事審議会会長などを歴任。
- ※掲載している内容は、2019年12月3日時点のものです。
- ※ページ内のコンテンツの転載を禁止します。