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犬もアレルギーを発症する?原因や症状、治療方法などを解説
目次
人間もアレルギーを発症しますが、犬もアレルギーを発症することがあります。犬のアレルギーは皮膚炎となって出現しがちですが、場合によっては、下痢等を引き起こすこともあります。
本記事では、犬のアレルギーについて、原因や症状、治療費の目安などを解説します。皮膚炎をはじめとしたアレルギー症状で頭を悩ませている方はぜひ参考にしてください。
犬のアレルギーの種類
犬のアレルギーも人間と同様、食べる・吸い込む・噛まれる・触れるなどで、「アレルゲン」が体の中に入ったときに、免疫が過剰に働くことが原因で発症します。
主なアレルゲンとして、花粉・ハウスダスト・寄生虫・細菌・食べ物・ウイルスなどが挙げられます。
場合によっては、アレルゲンと接触しただけでアレルギー症状が出ることもあるため、注意が必要です。
本記事では、犬によく見られる4つのアレルギー症状について解説します。
犬のアレルギー症状は多くの場合、「かゆみ」となって表れます。愛犬が自分の体を噛む、引っ掻く、体を床にこすりつけるなど頻繁に体をかゆがっている様子が見られたら、アレルギーの可能性を考慮して、動物病院を受診するとよいでしょう。
犬のアレルギー① アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、慢性的なかゆみを伴う皮膚疾患です。遺伝によってかかることが多く、3歳以下など比較的若いうちから発症するケースも少なくありません。
遺伝的要因で皮膚のバリア機能が低下しているため、アレルゲンが増える季節になるとかゆみが増す傾向にあります。アトピー性皮膚炎の原因や症状、診断方法、治療費などについて解説します。
アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎の原因となるアレルゲンの代表的なものは次の通りです。
犬の体にアレルゲンが侵入すると、アレルギー反応が起こって皮膚がかゆくなります。また、気温や湿度などの環境要因も影響しています。
3歳未満という比較的若い時期に発症しやすいのも特徴です。もちろん、それ以外の年齢で発症することもあり、年齢を重ねるごとにかゆみはひどくなる傾向にあります。
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎の初期症状として、顔周辺・足・わきの下・尻尾の付け根などにかゆみが表れます。犬はかゆみを我慢できません。強いかゆみが表れるため、皮膚を掻きすぎてさらに炎症が進む場合も多く見られます。
さらに悪化すると、皮膚の掻きこわしなどによる脱毛、傷から細菌が入ることによる皮膚感染症、炎症、色素沈着などの症状が表れることもあります。
アトピー性皮膚炎の診断方法
アトピー性皮膚炎は、他の疾患である可能性を除外する消去法で診断を行います。必要に応じて血液検査を行い、アレルギーの原因物質を推定し、総合的な判断でアトピー性皮膚炎と診断されることもあります。
ただし、血液検査がすべてではありません。検査の値だけでなく、症状や犬種、犬の年齢、生活環境などをもとに総合的に判断することが重要だとされています。
アトピー性皮膚炎の治療方法・治療費
アトピー性皮膚炎の治療はまず、かゆみや炎症といった目に見える症状を抑える治療を行います。症状が軽い場合は、エリザベスカラーやシャツ、ソックスなどを着用させ、患部への過度な刺激を防ぎます。
主な治療方法は次の通りです。
減感作療法とは、アレルギーを引き起こしているアレルゲンを少量ずつ注射し、アレルゲンに慣らしていくという療法です。
場合によっては、長期にわたる治療が必要になります。たとえば、減感作療法の場合、効果が出たか判定するまで2~3か月かかります。効果が出た場合でも、それを維持するために毎月の通院が必要です。検査を含めた治療費はひと月あたり約1万円程度かかります。
犬のアレルギー② ノミアレルギー性皮膚炎
ノミアレルギー性皮膚炎とは、ノミの唾液に対してアレルギー反応が起こった結果、発症する皮膚炎です。
たとえ、ノミに噛まれた部分が1か所だけであっても強いかゆみが起きることがあります。
ノミの生息しやすい9~11月に多くなりますが、温暖化や室内の暖房などにより1年中、ノミが繁殖しやすいため、季節を問わず発症が見られます。
ノミアレルギー性皮膚炎の原因や症状、診断方法、治療費などについて解説します。
ノミアレルギー性皮膚炎の原因
犬自身がノミアレルギーを持っていることが、ノミアレルギー性皮膚炎の原因の1つです。
ノミアレルギーを持っている犬がノミに噛まれ、ノミの唾液が犬の体内に入ると、アレルギー反応が起き、広範囲にかゆみや発疹が出ます。噛まれたのが1か所だけでもアレルギー反応が出るため、病院にかかった時点では犬にノミが見られないケースも少なくありません。
一方、ノミアレルギーを持っていない犬がノミに噛まれた場合、全身へのかゆみは起きず、噛まれた部位だけをかゆく感じます。
ノミアレルギー性皮膚炎の症状
ノミアレルギー性皮膚炎の症状として発疹があります。かゆみが出ると犬は我慢できず、引っ掻いたりなめたりして症状が悪化していきます。その結果、背中からしっぽの付け根にかけて毛が抜けたり、かき傷や赤み、ブツブツ、皮膚のただれなどが表れます。
ノミアレルギー性皮膚炎の診断方法
ノミの糞便やノミが見られるなどから診断されます。しかし、1か所噛まれるだけでも症状は出るため、必ずしもノミが確認できるとは限りません。
他の皮膚炎と症状が似ているため、皮膚層に少量のアレルゲンを注射して反応を確認する皮内テストなどを実施する場合もあります。
ノミアレルギー性皮膚炎の治療方法・治療費
ノミアレルギー性皮膚炎の治療は、ノミの駆除薬を使用します。ノミの駆除薬には、首に垂らすタイプや飲み薬などがあります。なかにはおやつのように食べられるものもあるため、獣医師と相談して、愛犬に合うものを処方してもらいましょう。
ノミの駆除後、かゆみや炎症、掻きこわしなどの皮膚病の治療を行います。
治療費はおよそ6千円程度です。
ノミアレルギー性皮膚炎は予防できます。とくに、アトピー性皮膚炎を持つ犬は、定期的にノミの予防薬を利用して対策を取るとよいでしょう。
犬のアレルギー③ 食物アレルギー
食べ物に含まれるたんぱく質に対する過剰反応が原因で、皮膚炎や軟便・下痢といった消化器症状などを引き起こす疾患を食物アレルギーと言います。
発症年齢は特に限定されておらず、1歳未満から発症するケースも多く見られます。季節性の変化はありません。皮膚炎の症状は、他のアレルギーによる皮膚炎と似ているため、症状だけで食物アレルギーだと診断するのは困難です。
食物アレルギーの原因や症状、診断方法、治療費などについて解説します。
食物アレルギーの原因
食物アレルギーの原因にはあらゆる食物が挙げられますが、代表的な食べ物は次の通りです。
食品添加物もアレルゲンになると考えられています。食物アレルギーのはっきりとした原因は判明していません。
発症年齢もさまざまで、それまで普通に食べていた食事が原因となって、突然アレルギー症状が表れることもあります。
食物アレルギーの症状
主に皮膚炎ですが、軟便・下痢といった消化器症状が見られたり、外耳炎を併発したりすることもあります。
アトピー性皮膚炎をはじめとした他の皮膚炎と症状が似ているため、症状だけで食物アレルギーと判断するのは困難です。顔や先端部、皮膚の重なる部分に症状が出やすいです。
犬は、皮膚がかゆくなると、なめる、掻く、嚙むといった行動を取り、口のまわりがかゆい場合、床に口をこすりつけることもあります。食物アレルギーの場合は、皮膚炎の症状に加え腸炎などによる下痢症状が表れやすい傾向があります。
食物アレルギーの診断方法
食物アレルギー由来の皮膚炎の場合、症状だけでは他の皮膚炎と識別できません。
一般的には、獣医師の指示の下、低アレルギー食や除去食を一定期間(約8~12週間以上)与えて経過観察します(除去食試験)。犬のアレルゲンはたんぱく質であることが多い傾向にあります。通常の食事に戻すと1~2週間で症状が再発します(負荷試験)。長期に及ぶため、その期間に家族などが他の食べ物を自由に与えないよう気を配らなければなりません。
この食事療法で効果が出た場合に、食物アレルギーと診断されます。必要に応じてアレルギー検査を行うこともあります。
食物アレルギーの治療方法・検査費
治療方法は食事療法が主となります。検査方法により治療費は大きく異なります。
アレルギー検査は3種類あり、すべて行うとおよそ4万~7万円程度必要です。各検査の費用内訳は次の通りです。
除去食試験を行いながら、アレルゲンを特定していく流れが一般的です。除去食試験には8~12週間ほどかかります。アレルギー食品が特定できた場合は、その食品を除去していきます。
また、アレルゲンの特定と並行し、すでに皮膚に起きているかゆみや炎症を抑えるために、内用薬・外用薬を投与します。
アトピー性皮膚炎などと同様に、皮膚のバリア機能が低下しているため、薬用シャンプーや保湿液などでスキンケアを行うこともあります。
食物アレルギー対策用のドッグフードの選び方
アレルギー対策用のドッグフードを選ぶポイントは次の3つです。
アレルゲンになりやすいといわれている、牛肉・乳製品・卵白・穀類などが入っているフードは最初から避けておくとよいでしょう。
原材料が少ないものを選んでおけば、アレルギーが出たときにアレルゲンを特定しやすくなる可能性があります。
また、添加物がアレルギーの要因となる場合もあります。香料・着色料・甘味料など不要な添加物はできれば避けておきましょう。
犬のアレルギー④ 疥癬(かいせん)
疥癬はヒゼンダニによって引き起こされる皮膚疾患です。感染するとヒゼンダニに対し過剰反応が起き、激しいかゆみを感じます。
疥癬の原因や症状、診断方法、治療費などについて解説します。
疥癬の原因
疥癬の原因のほとんどがイヌセンコウヒゼンダニの寄生です。すでに疥癬を発症している動物への接触で感染することの多い疾患です。野良猫・野生動物との接触やドッグランで感染することがあります。
加えて、動物そのものと接触しない場合でも、ヒゼンダニが付着している食器や敷物、寝床、ブラシなどから感染することがあるため注意しましょう。
寄生したヒゼンダニは犬の皮膚に入り込み、皮膚に穴を作って増殖していきます。ヒゼンダニは小さいため、肉眼では見つけられません。
疥癬の症状
軽症の場合は、耳のふち、ひじ、かかとなどにかゆみを感じます。脱毛、フケ、黄色がかったかさぶたなどが見られることもあります。かさぶたや皮膚を掻きむしることで、傷口から細菌が入り二次感染を起こす場合もあります。
加えて、掻きむしりによる掻き傷やかゆい部分を噛むことによる噛み傷ができることがあります。なめる、掻く、嚙むといった行動に注意しましょう。
重症の場合は、発熱、体重減少、リンパ節が腫れるといった症状が出ることもある疾患です。
疥癬の診断方法
ヒゼンダニが寄生しているかどうかは、皮膚の表面からフケを採取し、顕微鏡で確認します。ダニの数が多ければ見つかりますが、少ない場合はダニが見つからないこともあります。
そのため、ダニがいないというだけで、疥癬でないとは診断できません。
疥癬の疑いがあるにもかかわらずヒゼンダニが見つからない場合は、駆虫薬を使いながら皮膚の状態が改善するかどうか確認しながら、治療していきます。
疥癬の治療方法・治療費
疥癬の治療では、セラメクチンやイベルメクチンなどの殺ダニ剤を使用してヒゼンダニを駆虫することが多いです。かゆみの症状を抑えるために、かゆみ止めや炎症を抑える薬などを投与することもあります。
なお、かきむしった傷に細菌が入り二次感染を起こしている場合には、抗生剤を投与して治療します。
状況にもよりますが、疥癬の治療費はおよそ1万3千円程度です。
アレルギーのリスクが高い犬種は?
アレルギーの要因の1つに遺伝的な要素があります。一般的に、アレルギーになりやすいといわれている犬種は次の通りです。
上記以外の犬種はアレルギーを発症しないというわけではありません。年齢や犬種にかかわらず、アレルギーを発症することはあります。
犬のアレルギー治療はスピード感のある対応が大切
犬のアレルギーは、皮膚にかゆみを伴うものが多く見られます。治療開始が遅れると、皮膚のかゆみに耐え切れず、かゆい部分を掻きこわして傷が悪化する場合があります。
傷から細菌が入ると二次感染のリスクが高まるため、犬が皮膚をかゆがっていると感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。
日常的にブラッシングやスキンケアを行い、ノミの有無や皮膚に異常がないかを確認することで、皮膚疾患やアレルギーの早期発見につながります。
- ※掲載している内容は、2023年11月8日時点のものです。
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