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いきいき生活の知恵

第6回 高齢期の貯蓄を減らす原因のひとつは子や孫への援助費用

 老後資金のご相談を受けている中で気になることが多いのは、お子さんやお孫さんのための出費。年金暮らしの中で、爪に火をともすようなつましい暮らしをしている方でも、お子さんやお孫さんにかけるお金は惜しまないケースが少なくありません。そこで今回は、お子さんたちへの援助で、老後資金を減らしてしまったケースを2つご紹介しましょう。

子どもたちへの帰省費用の援助で貯蓄は激減

 4年前、ご主人に先立たれた70代後半のAさん。収入は遺族年金の月13万円ちょっとです。生活費はひと月12~13万円でやりくりをしていて、日々の生活費は、年金でなんとかまかなっていました。
 ご主人が元気だった頃は、年に2回ほど温泉旅行に行っていたそうですが、ひとりになってからは、遠出はほとんどしていないそう。現在のAさんの楽しみは、お盆の時期と年末年始に帰省してくれる、息子や娘の家族たちとの時間を過ごす時間。2人のお子さんが孫たちを連れて帰省してくれるのを待ち望んで暮らしています。
 そんなAさんは帰省のたびに、交通費としてお子さんそれぞれに15万円ずつ渡しています。これはご主人が元気だった頃からの習慣で、帰省に際して、お子さんたちもアテにしているお金だそうです。
 Aさんの貯蓄額は、現在700万円ほど。日々の生活はつましくしているものの、家電の買い替え費や固定資産税のような特別支出までは年金でまかなえません。それらの特別支出に加えて、年に60万円もかかるお子さんたちの帰省費用が重なって、Aさんの想定よりもかなり早いペースで貯蓄が減ってきています。
飛んで消えるお札 驚く老夫婦  「このままでは、80代に入った頃には、貯蓄が底をついてしまうかも・・・」
 不安でたまらないものの、お子さんたちに貯蓄が700万円まで減っている現実を伝える勇気はありません。「この先、貯蓄が500万円を下回ったら腹をくくって伝えるつもり」だとAさんは言いますが、遅すぎるのが現実ではないでしょうか。

離婚して戻ってきた子と孫の生活費を丸抱え

 次にご紹介するのは、離婚して戻ってきた娘さんと、お孫さんの生活費を丸抱えしているBさん夫婦です。ご主人、奥様とも60代後半。娘さんが3人いて、お孫さんは合計で7人います。離婚して戻ってきたのは、次女とそのひとり娘。結婚した相手が転職を繰り返し、無職の期間も短くなかったそう。次女もパート勤めで家計を支えていたものの、甲斐性のない夫に嫌気がさして離婚。「生活を立て直すまで」という約束で、実家に戻ってきたそうです。
 離婚して戻ってきた当初は、「娘(次女)は離婚で傷ついているから、しばらくそっと見守ってあげよう」とBさん夫婦は話し合いました。「1年くらいは私たちが生活の面倒をみてあげるから、そのあいだにきちんとした職を見つけなさい」と次女に伝えました。
 その言葉を聞いた次女は、正社員になるべくハローワーク通いを始めました。パソコンのスキルも必要だと感じた次女は、職業訓練にも申し込み、パソコン技能を高めることにも努めました。そんな様子を温かい目で見守っていたBさん夫妻ですが、次女は1年を過ぎても、実際に働く様子はありません。仕事のことを尋ねると、「私だって、一生懸命仕事を探しているの。ひとり親は仕事を見つけるのも大変なのよ」という返事が返ってくるばかり。
ため息をつくおじいさん  「正社員の仕事が見つからないのなら、せめてアルバイトでもして、自分たちの食費くらいは稼いだらどう?」と聞くと、「いったんアルバイトを始めたら、正社員になるのはもっと先になってしまうから、それは無理」との返事。それからさらに3年の月日が経ちましたが、次女は正社員の職に就くわけでもなく、バイトで数万円を稼ぐだけで、独身のときのように、親の庇護のもとで暮らしています。
 Bさんは退職したときに、5000万円を超える貯蓄を持っていました。自分たちの老後資金としては、まずまずの金額だとも感じていたそうです。次女が出戻るとは思ってもいなかったBさんは、退職してすぐに大規模リフォームを実行。その後に次女たちの面倒をみることになり、2人の生活費の援助が想定以上に長引いている状態です。Bさんの貯蓄は、60代後半ですでに3000万円台前半まで減ってきています。
ため息をつくおばあさん  「娘たち3人を無事に嫁がせて、人並みに安泰な老後を送れると思っていましたが、今のペースで援助を続けていたら、自分たちが80代を迎えるころには貯蓄が底をついてしまうかもしれません。とはいえ、いまさら次女に援助をやめるとも言い出しにくいですし、家だって次女ひとりに相続させるわけにもいきません。長女や三女が黙っていないでしょうからね」と、先々の相続のことも含めて悩む日々が続いています。

子どもは庇護が過ぎると、親が弱くなったときに適応できない

 この2つの例を読んで、「ウチはそんなことはしない」と思ったり、「少しくらいの援助ならしても大丈夫でしょう」と感じたかもしれません。ですが、当初の甘い見通しが、老後破産予備軍にまでなっているケースはいくらでもあります。
 自分や配偶者が後期高齢者になり、介護のリスクが高まったとき、お子さんたちに援助したことを後悔せずに済むでしょうか。さらに怖いのは、親に守られてきたお子さんほど、親の介護が発生すると、介護を担わずに逃げ出してしまうケースが少なくないことです。「親は自分を守ってくれる強い存在」であり、自分が守るべき相手ではないと思うのか、弱くなった親を見たくないのか、下の世話が必要になった親の介護を拒否するお子さんと何人も出会っています。
 困る老夫婦 社会人となったあとは、お子さん自身が人生を切り開いていくしかありません。その際、手を出したいと思っても、本当に困ったときだけに限定する必要があります。子や孫に対して精神的な支えにはなるとしても、金銭面ではほどほどにすべき(=見切りをつけるべき)だと感じる機会が多くなっています。お子さんやお孫さんへかけるお金が、老後資金に見合っていないと少しでも感じたなら、「かけ方を減らす方法」を早めに検討すべきでしょう。

ファイナンシャルプランナー 畠中雅子さん

お話をうかがった方

ファイナンシャルプランナー

畠中 雅子 さん

【プロフィール】

大学時代にフリーライター活動をはじめ、マネーライターを経て、1992年にファイナンシャルプランナーになる。

新聞・雑誌。ウエブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、 講演、相談業務などをおこなう。

教育資金アドバイスを行う「子どもにかけるお金を考える会」、高齢者施設への住み替え資金アドバイスを行う「高齢期のお金を考える会」、主にひきこもりのお子さんの生活設計を考える「働けない子どものお金を考える会」を主宰している。

著書は、「貯蓄1000万円以下でも、老後は暮らせる!」(すばる舎)ほか、70冊を超える。

プライベートでは、社会人の娘、大学生の息子2人の母。

  • ※掲載している内容は、2020年8月20日時点のものです。
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